VISION OF FASHION

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COLUMN

乙景の”VISION” – 京都の古民家で魅せたいもの

夜の乙景

ファッションは時代のトレンドや、ブランドネーム、プライスそのものなど、表層的なもので形を変えてここまでやってきた、と私たちは感じています。V.O.Fが実現したいのは、そうして肥大化してしまった「プライドの鎧」を脱いでもらうことです。

そのために京都の古民家という小さな場所=乙景で、ひっそりと描いている大きな“VISION”、それが「もの」の持つ力に立ち返ること、そして「アジアの美意識」を伝えることです。

「もの」の持つ力に立ち返る

ZIIIN / "ANGO" 硫化染 Brushed cotton Long shirt / RENGA

2020年はじめに起きた新型コロナウイルス感染症によるパンデミック。ファッション業界にも大きな打撃を与えた出来事でしたが、ファッションそのものに大きな変化を促した出来事でもありました。

それは「他者のためのファッション」から「自分のための衣服」への変化です。

つまり外出を控え、せいぜい半径100m以内での生活が日常になっていくなか、誰かのために衣服をまとう機会は減り、自分にとってコンフォタブルな衣服を選ぶことの価値が高まった。私たちはそう感じています。

コンフォタブルな衣服とは素材感や着心地が良いもの、自然と肌や心が選ぶもの―――つまり「もの」と「わたし」がまるで磁石のように惹かれ合うような衣服のこと。

PETROSOLAUM / Kung Fu flat / GL / BL

かつて柳宗悦(やなぎ むねよし)は、全国を駆け回って無垢な美しさを持つ工芸品をかき集め、「民藝」という美意識を生み出しました。

日々、無心で同じものを作り続けることにより、作り手の自我が入る隙間がなくなった結果、自ずと純粋なものへ昇華されていったもの。それが民藝です。

乙景は柳宗悦のこの思想に多分に影響を受けつつも、独自の美意識をご提案しようとしています。

「作り手の自我が入る隙間がなくなったことで生まれる美しさ」というよりは、「作り手が自我と向き合い、洗練させることで生まれる美しさ」とでも言えるでしょうか。

「もの」の持つ力に立ち返り、「わたし」が自ずと惹かれ、「もの」もまた「わたし」を呼ぶような衣服やアクセサリー。それが乙景がお客様にご紹介したいファッションの形なのです。

「アジアの美意識」を次の世代へ

律動 / "AMIDA" BANGLE
律動 / "MIKADO" BANGLE

では、乙景にとってこのようなファッションの土台となるべき基準は何か。それは「アジアの美意識」です。

万葉集に端を発し、千利休によって成熟した日本古来の美意識「わびさび」。江戸時代に生まれ、市井の人々が生活の中で磨いてきた美意識「粋(いき)」。私たち日本人の体には、こうした言葉ではっきりと説明できないような美意識が根付いています。

「アジアの美意識」もそんな感覚の一つです。言葉で説明しようとするほど、どうにもこうにもズレてしまう。しかし目で見て、手で触れ、身にまとえば、たちまち「これだ」とわかる。

乙景の門

そうした美しさを備えた衣服やアクセサリーをセレクトし、次の世代へと伝えていく―――確かにいささか大仰な話かもしれません。

しかし乙景は京都という美しい都に、店を構えさせていただいています。たとえ今は大仰な話だとしても、この大きな舞台を借景に一歩一歩進んでいけば、いつかきっと実現できる“VISION”だと信じています。