東京・CONTEXTスタッフ伊藤(香) – いま手にとって欲しい逸品【2022-23A/W編】

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COLUMN

東京・CONTEXTスタッフ伊藤(香) – いま手にとって欲しい逸品【2022-23A/W編】

こんにちは、CONTEXT TOKYOスタッフの伊藤香里菜です。朝晩はすっかり冷え込むようになり、ニットやアウターが着られる季節になりましたね。

CONTEXT TOKYOでも、お客様と一緒に「今年の秋冬は何を着ようか?」と嬉しい悩みについてお話しさせていただくことが増えてきました。

今回は京都・乙景スタッフの山口さんのいま手にとって欲しい逸品【2022-23A/W編】に続き、私からも今まさに手に取っていただきたいアイテムをご紹介します。

紹介させていただくのは、UMA WANGのJESTER JKT JEANSとFELIX PANTS JEANSの2着。私が日頃、お店に立ちながら、街や服について感じていることと絡めてお話しできればと思います。

“自分の時間”を感じて欲しい

東京という街に流れる時間はとても早く感じます。電車も、お店の入れ替わりも、人が歩くスピードも、流行り・廃りも、とてもはやいですよね。

本来私たちには、それぞれの“自分の時間”があるものです。しかし、知らない間に東京のはやさに翻弄されてしまうことがあります。

“自分の時間”に気づくためには、東京を離れて旅してみたり、スマートフォンを置いて出かけてみたり、意識的にそのはやさと距離を置く必要があります。

そうして“自分の時間”を拾い集めることで、自分の“好き”や“楽しい”を間違えずにいられるのではないでしょうか。

CONTEXT TOKYOは、私にとっても、お客様にとっても、服やファッションを通じて “自分の時間”を感じる場所であって欲しいと個人的に思っています。

今回紹介する2着は、そういった“自分の時間”を味わうためにおすすめしたい作品の一つです。

UMA WANG JESTER JKT JEANS

UMA WANGはZIGGY CHENと同じ中国のブランドですが、全体的に男性的な力強さを感じるZIGGY CHENの作品に対して、UMA WANGには色々なところに女性的な柔らかさを感じます。

JESTER JKT JEANSも柔道着のような形をしたジャケットに、UMA WANGらしいエレガンスを感じさせるディテールが施されています。

例えば柔道着は前立てが重なって、首元がぐっと詰まるのに対して、このジャケットは前立てが重ならず、首元から胸元にかけて程よいゆとりが生まれています。

また袖も先に向かって少しずつ広がっていて、チャイナジャケットのような可愛らしさも感じます。

実は、JESTER JKT JEANSは店頭ではスルーされてしまうことも少なくない作品でもあるんです。私が考えるに、その理由は「一見するとUMA WANGらしくないから」です。

やっぱり「UMA WANGと言えば柄物」というイメージを持っているお客様も多く、無地のJESTER JKT JEANSはハンガーにかかっていると大人しい存在なので、つい見過ごしてしまうのかもしれません。

ですが、この生地にもUMA WANGの哲学はしっかりと反映されています。

例えば染め。製品にしてから天然染料を使って染めているので、染まりきっている部分とそうじゃない部分がはっきりと見てとれます。

両側のポケットの中や、1つ1つの縫い目、袖をロールアップした裏地などを見ると、ワントーン明るいのが一目瞭然です。

また染めや洗いの過程で生まれるパッカリング(縫い目にできる縮みやひきつりによる凸凹)を利用して無地の生地にリズムを作って、デザインとして生かしている点もUMA WANGらしい生地の遊び方です。

今回、このジャケットを紹介したいと思ったのは、こうした染めやパッカリングに“この服の時間”が表現されていると感じたからです。

というのも、JESTER JKT JEANSを見ていると、この服がどんな時間を過ごして作られてきたのかが、じわじわと伝わってくるんです。

このジャケットや生地そのものが歩んできた変化に耳を傾けている間は、きっと“自分の時間”にどっぷりと浸れるはずです。そうやって時間を忘れてこのジャケットをじっくり楽しんでいただけたらと思います。

確かにJESTER JKT JEANSのデニム生地はタフですが、染め・洗いの過程で程よく柔らかさが出ているので、肩周りの生地の収まりも良く、見た目よりも着こなしやすいんです。

なので、単品使いでジャケットとして着るのはもちろん、ZIGGY CHEN DOUBLE BREASTED OVERSIZED COATなどの大きめのコートと合わせても可愛く着こなせます。

個人的には、インナー使いした時の胸元から覗くチャコールブラウンの生地が大好きで、贅沢な使い方が楽しめます。

メンズコレクションの作品ですが、オーバーサイズで着た時の肩の丸みや、末広がりの袖など女性的な柔らかさがあるので、ぜひ女性にもワンピースなどと合わせて着てみて欲しいアイテムです。

また、シンプルな作品なのでミリタリー要素の強いZIGGY CHEN FIELD VESTを重ねたり、インナーにJAN JAN VAN ESSCHEの”KIMONO#12“のようなレイヤードをしたりすれば、個性的な着こなしも楽しめます。

ぜひお店で一緒に「あれもいい、これもいいな」と色々な組み合わせを楽しんでいただければと思います。

UMA WANG FELIX PANTS JEANS

FELIX PANTSはS/Sコレクションでも見られた、サイドシームをなくし、股下の部分を巻き込みパターンで作られたパンツです。これをJESTER JKTと同じデニム生地を使って作ったのがFELIX PANTS JEANSです。

サイドシームとは、文字通りパンツの左右、脇に走る縫い目(シーム)のこと。大量生産のパンツの大半にはこのサイドシームがあります。

しかしUMA WANGのほか、JAN JAN VAN ESSCHEやZIGGY CHENなどのブランドでは、このサイドシームをなくしたパターンで作られたパンツがたくさんあります。

ファッション業界では「サイドシームがない、美しいパンツ」などと表現されますが、なぜサイドシームがないとパンツが美しくなるのでしょうか。

これには大きく2つの理由があると思います。一つは見た目の美しさです。縫い目があると、そこで生地が分断されて、いうなればサイドシームという“柄“が入ることになります。

これをなくすと織り上がった生地そのままになるので、見た目が洗練されるんです。

二つ目はシルエットの美しさです。例えばワークパンツなどタフさが求められるパンツのサイドシームは、折り伏せ縫いという生地が合計4枚重なる方法で縫われていることがあります。

生地が4枚も重なると、その部分は硬く、厚くなります。すると前から見た時にぽっこりとした厚みが出たり、動いた時に生地がきれいに揺れなくなったりするんです。

サイドシームをなくせば生地は1枚だけですから、こうした問題も解決できます。

では巻き込みパターンはどうでしょうか。

ここで言う巻き込みパターンというのは、後ろ中心から右側に傾いたように設計されたパターンのことです。このパターンの一番大きなメリットは、一番負荷のかかる股の部分に縫い目がこない点です。

2枚の布を縫い合わせた部分と、1枚の布を比べると、強度が強いのは後者です。

デニム生地を使用しているのを見ると、UMA WANGはこのパンツを「タフに履き込んで欲しい」と思って作ったのでしょう。そう考えると、耐久性が増す巻き込みパターンを使ったのも納得ができますよね。

製品染めのムラ感やパッカリングこそありますが、FELIX PANTS JEANSは基本的に使い勝手のいいシンプルなパンツです。

確かに、やや股上の深いドロップクロッチシルエットなので、お店では「サルエルパンツはちょっと苦手で……」と言って避けるお客様もいらっしゃいます。

でも実際に履いてみると、生地は見た目よりも柔らかく感じますし、股下の収まりがいいので、履き方次第でシルエットを変えることができます。

ぐっと引き上げてウエストで履けばノーマルなシルエットのパンツとして、腰を落として履けばドロップクロッチシルエットのパンツとしても楽しめるんです。

なのでJESTER JKT JEANSとのセットアップスタイルだけではなく、ジャケットやブルゾンなどを羽織ったり、ニットを着たりと、トップスに何を持ってきてもしっくり着こなせます。

特に今季のCONTEXT TOKYOはニットが豊富で、JAN JAN VAN ESSCHE、SUZUSAN、XENIA TELUNTS、Taiga Takahashiのほか、A.O.Fのユーズドアイテムも含めると選び放題です。

ぜひ一緒にFELIX PANTS JEANSに合うニットを探させていただければと思います。

洗練された、シンプルでタフなパンツ。それがFELIX PANTS JEANSです。時と場所を選ばずに着られるので、難しいことを考えなくても履き倒していくことができます。

だからこそ、FELIX PANTS JEANSには“着る人の時間”がより色濃く反映されると私は思います。着る人の体型、履き方、履いて行った場所など、全てが履くたびに刻まれていくような、そういうパンツなんです。

もちろんハンガーにかけていても、新品の時に試着をしても十分素敵です。でもきれいなまま履くというよりは、相棒のように履き込んでいって、どんどん“自分の時間”の一部にして行って欲しい一本と言えます。

CONTEXT TOKYOでは“贅沢な時間”を過ごして

私も含めて、生きていれば色々と考えなければならないことは、たくさんあります。

だから好きなことだけを考えられる時間というのは、ある意味で贅沢な時間なのかもしれません。CONTEXT TOKYOにいらっしゃる時は、そんな贅沢を堪能していただきたいと私は思っています。

今回紹介した2着以外にもおすすめしたい作品はたくさんありますので、ぜひお店まで足を運んでいただければ幸いです。

<NEWS>
・東西各店に新ブランドJurgen Lehlの第一便が到着。
・東西各店にZIGGY CHENの 2022-23A/W COLLECTIONの第二便が到着。
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書き手/伊藤 香里菜(CONTEXT TOKYO スタッフ)
編集/鈴木 直人(ライター)