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JAN JAN VAN ESSCHE SPECIAL INTERVIEW———ABOUT “DENIM series”

今年の春夏シーズンのV.O.F JOURNALでは、デザイナーにご協力いただき、インタビュー記事を作成しました(JAN JAN VAN ESSCHE 2022S/S SPECIAL INTERVIEW―――“HANDWOVEN series”に込められた想いとブランドの哲学 )。

続く秋冬シーズンでも、デザイナーJan Jan Van Essche氏にアポイントを取り、インタビューを実施。COLLECTION 12 “CYCLE”、PROJECT 10 “A HORIZON”と2回連続で取り扱った“DENIM series”についてお話をお聞きしました。

使用されている生地のこと、アウターに採用された“デニムジャケット”と“ライダースジャケット”のこと、そしてデザイナー本人が愛用している作品のこと。

デニム好き、JAN JAN VAN ESSCHEのファンはもちろんこと、最近デニムが気になってきたけど「これ!」というものに出会えていない人にも読んでいただきたいインタビューです。

“DENIM series”の生地について——「私にとってのデニムとは、“ワードローブの定番”のようなものです」

__“DENIM series”に使われている生地は、どこで織られたものですか?

Jan Jan Van Essche氏(以下、Jan Jan):岡山県井原(いばら)市のものです。

__井原市と言えば、デニムで有名な日本の中でも“聖地”と呼ばれる産地ですね。江戸時代中期から綿花栽培が盛んで、明治から大正時代にはすでに「裏白」と呼ばれるデニム生地が作られていたそうです。

井原市のデニムはその時代から使われている旧織機(シャトル織機)で織られるセルビッチデニムが有名ですが、“DENIM series”に使われている生地もこのシャトル織機で織られたものですか?

Jan Jan:はい、第一次産業革命当時に作られた伝統的な織機で織られたものを使っています。

この織機で織った生地は機械の構造上、新しい織機で織る生地に比べて幅が狭くなります。私はそれを考慮したうえでパターン(型紙)を作成しています。

__“DENIM series”にだけ、特別なパターンを使用しているということでしょうか?

Jan Jan:いえ、生地の幅に合わせてパターンの配置を変えるだけで対応できるようにしているので、このパターンは幅の広い生地にも狭い生地にも使えます。

ただし、1mあたりの生地の使用量は、(シャトル織機で織ったデニムのような)幅の狭い生地の方が多くなるので、より無駄のない生産が可能になります。

__COLLECTION 12 “CYCLE”では本藍染を、今回のPROJECT 10 “A HORIZON”では墨染のデニムを使用しました。藍染も、墨染も大変手間と時間がかかる染色技術です。一般的なインディゴ染料や、硫化染料を使用しない理由は何ですか?

Jan Jan:一般的な非天然染料を拒否するわけではありません。しかし、天然染料を使えるのであれば、なるべくそれを使って服作りをしたいと考えています。

デニムでは特にそう思いますね。天然染料で染めたデニム生地は、作品をより個性的で、格調高いものにしてくれますから。

デニムは大量生産されることが多く、親しみのある生地です。ところがシャトル織機で織り、天然染料で染めたデニムで服を作ると、それはとても特別な作品になるのです。

非天然染料では出せない深く、豊かな色調、そして手仕事のエネルギーが伝わってくるような気がするんです。

事実、藍染と墨染だけでも、染色工程は全く違います。染料が繊維に定着するプロセスも違えば、日光や摩耗、洗濯から受ける影響も違う。

だから同じ“DENIM series”の同じモデルでも、藍染の生地と墨染の生地のどちらを使うかで、見た目の印象も経年変化も異なってくるのです。

なぜ“デニムジャケット”と“ライダースジャケット”だったのか?

__TROUSERSはS/SとA/Wで同じモデルが採用されましたが、JACKETはS/Sではクラシックなデニムジャケット、A/Wではライダースジャケットと異なる形が採用されています。これには何か理由はありますか?

Jan Jan:今回のデザインプロセスでは、生地の色が私を導いてくれました。藍染デニムのブルーはデニムジャケットが持つクラシックなテイストに、墨染デニムのグレーはライダースジャケットが持つラフなテイストにふさわしいと感じたのです。

__なるほど、確かに藍染のブルーはヴィンテージウェアのインディゴデニムを、墨染のグレーはライダースジャケットのブラックレザーを想起させますね。

ところで、PROJECT#10 A HORIZONの“DENIM series”で、新しいデザインは”JACKET#49″のライダースジャケットのみでした。このモデルについて、「ここが面白い!」と感じているところを教えてください。

Jan Jan:この作品の面白さの一つは、図形的な構造にあります。

“JACKET#49”のボディは長方形のパターンで作られています。長方形を構成する直線は直角に交わっていますが、”JACKET#49”の生地はそこに前立て(ボタンで開閉する部分)を対角線方向に走らせることでつなぎ合わせられているんです。

直角で構成される図形のなかに対角線を引くことで、一着の衣服として成立している……ここに”JACKET#49”の面白さがあると感じています。

__数学者が持つ美学のようなものを感じるお話ですね。改めて”JACKET#49”をじっくり眺めてみたくなります。

Jan Jan Van Essche氏の愛用モデルは?——「個人的に気に入っているのはTROUSERS#67です」

__最後に、Jan Jan Van Essche氏が“DENIM series”に対して感じている「ここが好き!」を、いくつかの切り口からお聞きしたいと思います。

まずは生地に関する「ここが好き!」からお聞かせください。2シーズンにわたって使用するほど、このデニムに惹かれたのはなぜですか?

Jan Jan:今まで見たことも、感じたこともないような、美しい素材だったからです。

私はデニムが大好きでよく着ています。そんな私にとってデニムとは「ワードローブの定番」と言えるものです。

個性的で、様々な着こなしができ、幅広い表現に落とし込むことができるのが、デニムならではの特徴です。

ソリッドでありながら(かたさがありながら)ソフトで、繊細でありながら粗忽。豊かで多様な使い方ができる素材。そして、多くの歴史が刻まれた素材でもあります。

とりわけ“DENIM series”の生地はシャトル織機で織られているので、見る人や着る人の感情を突き動かすような質感を持っていますし、天然染料が持つ色調は豊かで替えの利かないものです。

また、デニムはもともと色褪せや脱色によって独特な風合いを帯びていく素材ですが、“DENIM series”に使用しているデニムではその性質がより高いレベルで表現されています。

だから私はこの生地に惹かれたんです。

__では次にモデルに関する「ここが好き!」をお聞かせください。AIZOME DENIMシリーズとSUMI DENIMシリーズで、愛用しているモデルはどれですか?

Jan Jan:私が個人的に気に入っているのはTROUSERS#67で、このモデルを“ワークウェアデニム”と呼んでいます。AIZOME DENIMのモデルも、SUMI DENIMのモデルも、1年前からほぼ毎日履いています。

ワークウェアならではの魅力であるワイドなフィット感と大きなポケットが大好きですし、厚手でありながら柔らかさも併せ持つデニムがもたらす快適な着心地も大好きなんです。

__TROUSERS#67はどのように着こなしていますか?お気に入りのコーディネートを教えてください。

Jan Jan:最近はSHIRTS #89(長袖のレギュラーカラーシャツ)と合わせることが多いのですが、PROJECT 10 “A HORIZON”で考えればストライプのニットたちとの相性もすごく良いんですよ。

ただ私が思うデニムの良いところは、何と合わせても合うところです。実際私にとってのデニムとは、何を着るべきかあまり考えたくない時に着る、頼りになる存在なんです。

シャツと合わせればフォーマルスタイルに、チュニックと合わせればリラックススタイルに。着る人は、あまり深く考えずに自由に楽しんでもらえたらと思いますね。

__今回も“DENIM series”はもちろん、JAN JAN VAN ESSCHEの作品がもっと好きになるお話をありがとうございました。お忙しいなかご対応いただき、改めて感謝いたします。これからのJAN JAN VAN ESSCHEのクリエイションも楽しみにしています!

<LOOK PHOTO>
Clothing:Jan-Jan Van Essche – @janjanvanessche
Shoes:Petrosolaum – @petrosolaum

<NEWS>
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語り手/Jan Jan Van Essche(JAN JAN VAN ESSCHEデザイナー)
書き手/鈴木 直人(ライター)
翻訳/伊藤 香里菜(CONTEXT TOKYOスタッフ)