ZIGGY CHEN 2023S/S “POETOURNEY”について – CONTEXT TOKYO店主・伊藤(憲)

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ZIGGY CHEN 2023S/S “POETOURNEY”について – CONTEXT TOKYO店主・伊藤(憲)

入荷直後から、大変ご好評をいただいているZIGGY CHEN 2023S/S “POETOURNEY”の作品。ゴールデンウィークもたくさんのお客様に手に取っていただきました。

今回は、このタイミングでCONTEXT TOKYO店主・伊藤(憲)から、じっくりと今期のZIGGY CHENについて語ってもらおうと思います。

ZIGGY CHENはどんな想いを今期の作品に込めたのでしょうか。そしてそれをどのような形で表現したのでしょうか。伊藤さんの解釈を聞かせていただきました。

ZIGGY CHENが“POETOURNEY”で描く、人生の叙情詩

__2023S/SのZIGGY CHENのテーマ“POETOURNEY”は、Poetry(詩)とJourney(旅)を組み合わせた造語ですが、伊藤さんはこのテーマをどのように解釈しましたか?

伊藤(憲):数シーズン続いている道教の要素がさらに濃くなった、時の移ろいの美学を感じるとても叙情的なシーズンだと感じました。

Poetry(詩)とJourney(旅)とは、人生そのものです。人は生まれてから死ぬまで、時の流れの中で戻ることのできない旅をしてるんです。そんな長い旅の中において、生きることの喜びを諭すかのようなシーズンです。

ありのままの自然と一体化することで我を保つ、道教の無為自然の思想をストレートに表現した印象です。

__なぜZIGGY CHENはそういった表現をしたのだと思いますか?

伊藤(憲):今期の作品を手に取った時、本当の豊かさとはなんだろう?と、服を通して語りかけてくる感覚があったんです。「今この瞬間」を大切に生きる哲学が込められているように感じます。

__それはどういうことでしょうか?

伊藤(憲):マルセル・プルーストの『失われた時を求めて』のように、僕は本当の豊かさとはお金や名声じゃなく、「紅茶が美味しい」とか「風が気持ちいい」と思えることであり、今のその一瞬を楽しんで生きることこそが大切なのだと感じます。

「服を選ぶ楽しさ」「着ることの喜び」もそうですよね。自然に還ること。だからこそ今シーズンの色に黒はなくて、自然の中に溢れた色を用い、素材もどれも自然由来のものです(コットン、リネン、シルク、ビスコース、レーヨン)。

自然体でいられるようにどれも心地がよく、軽くてストレスフリーな着心地が魅力的です。

__なるほど、確かにどれも軽やかな着心地です!

伊藤(憲):日本も中国も、都市圏はどこも近代化されていて、キラキラと一見豊かそうに見えるけど、本質は隠れてしまいがちです。デジタルで、ビジネス的に発展したからこそ、アナログなモノやコトの大切さに立ち返る時なのだと思うんですよね。

自然に身を置くことで自身を保ち、自らの喜びに気が付ける。そんな原点に戻ったかのような洋服が今シーズンのZIGGY CHENの作品なのだと感じました。

それと同様に、都会の発展は自然の破壊によって成り立っていますよね。

__どういうことでしょうか?

もちろん中国に限らずですが、都会が発展するためには環境の犠牲が伴っています。急速な都市化・再開発の影響で中国は今、水質や大気の汚染、砂漠化といった問題を抱えています。

ここ100年の間に28,000本もの河川が消失し、工業用水が川に流れ出て真緑や真っ赤になって魚が浮いていたり、森林地域よりも砂漠地帯の方が広くなってしまっていたり、中国が誇る美しい原風景は徐々に失われていきつつあります。

それって本当に豊かと言えるのでしょうか?

もっとゆっくりのスピードで、自然と都会の相反する要素が調和するバランスがあるはずです。僕たちの人生における時間や、発展と共に失われていく自然のイメージが、今シーズンの切りっぱなしのディテールで表現をしているのかもしれませんね。

__ううーん、納得です。今シーズンに使われているプリントも自然的ですよね!

伊藤(憲):そうなんです。今シーズンで唯一のプリントの柄には、クワガタが飛び回り、ざくろやパイナップルが実り、シャクヤクが咲き乱れ、クラゲが漂い、人の手が動きを見せるなど、様々なモチーフがどことなく夢の中の風景のように同時に描かれています。

中国の美しい原風景がまるで桃源郷(天国)のように表現されているんです。そしてこのプリントの柄にはそれぞれ意味があると感じています。

__!?

伊藤(憲):各モチーフについて記してみます。

クワガタ:ギリシャ神話に出てくる、クワガタに変身させられたケラムボス

数多くの羊の群を率いる羊飼いであるケラムボスに、牧神パンがある警告をします。が、彼は若さ故の傲慢さからパンの警告を聞かず、クワガタに姿を変えられてしまいます。

ざくろ:ギリシャ神話に登場する、ペルセポネとざくろ。

女神デメテルと天界の王ゼウスの娘のペルセポネは、冥府の王のハデスの妻となってしまいます。

そしてハデスに死者の国の食べ物であるざくろを食べさせられてしまい、完全には元の世界に帰れなくなってしまうがデメテルの元に帰ってくる。「死」と「再生」の象徴。

シャクヤク:シャクヤクの学名パエオニアは、ギリシャ神話の医療の神パイエオンから由来しています。

黄泉の国王プルートーが病気になった時、パイエオンは芍薬の根を薬として用い治したそう。しかし医術の神アスクレピオスの嫉妬により殺されてしまいます。「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」と言われるように、美人の象徴であり嫉妬の対象でもあります。

クラゲ:クラゲはギリシャ神話のメデューサを表しています。

古来より蛇は「死」と「再生」の象徴であり、自然界の偉大な姿を表しています。

手:ギリシャ神話のミダスの手。

手に触れるものを全て黄金に変える力を神から授けてもらうも、触れた飲み物や食べ物も、友も自慢のバラの庭も全て黄金に変わってしまい嘆き悲しむ。この力を失くし元の身体に戻すよう神に頼んだ。

「富よりも大切な物があり、富を得ても失う物が多く、人生において何が一番大切なのかを見極める必要がある」という教訓。

パイナップル:多くの実がなること、ブラジル原産のパイナップルを輸送する困難さから、「富」と「財産」の象徴とされています。

こう見ると、あるキーワードが浮かんできます。「死」と「再生」。それと「傲慢」、「嫉妬」、「富」と「財産」。ギリシャ神話に登場するモチーフも多く、人間の「欲」です。

__ふ、深い!!!

伊藤(憲):自然と一体化することでそんな「欲」いわゆる「俗世」から距離を置き、本当の豊かさを伝えてくれる。

自然と人為という相反するもののバランスを、丁寧に丁寧に調整をし、表現された素晴らしい作品たちなんですよ。

一線「で」画す——直線で描く、自然と人為の黄金比

__ふむふむ、考えさせられますね。では、例えばどうやって調整しているんでしょうか?

伊藤(憲):全てはバランスです。ZIGGY CHENのコラムを書く時に毎回言っていると思うのですが、東洋哲学である「陰陽太極図」的なバランスのモノづくりをしています。

今シーズンにおいては自然の表と、都会的な裏。

それと、直線がポイントです。

__直線!?

伊藤(憲):自然界に直線は存在しません。曲がり、うねり、ねじれるのが自然です。

今期のZIGGY CHENはカラーパレットも自然、素材も自然由来のもので統一をしています。そうした自然の中に直線を組み込むことで、ぐっと都会(人為)的なムードを作っているんです。

ナチュラルな色や素材とは裏腹に、シルエットやディテールは直線的です。

__シルエットを初めて見た時、僕は「パッドを使わずに、肩のラインを直線的に作る技術を確立したんだ」と思いました。

伊藤(憲):それがまさに、今表現したいバランスなんですよ。色も素材も自然で、シルエットも曲線にすると、自然が強すぎます。

この直線の都会的なディテールがあることで、都会の中で着ていても破綻しないコーディネートを楽しむことができるんです。

__確かに今季はCLASSIC UTILITY JACKETを始め、裾の部分にも直線的なディテールが入っていました。これはそういう意図だったのか……。

伊藤(憲):恐ろしいまでのバランスへのこだわりです。この調整があるからこそ、誰でも、どんな街でもフィットする洋服になるんでしょうね。

ZIGGY CHEN 2021-22AW “今シーズンおすすめしたい逸品”【東京・CONTEXT編】でも話したように、中国の庭園は、池・石・木・橋・亭の5つの要素で構成されています。

このうち直線が入っているのは、橋・亭=人の手で作られたものだけ。中国では古くから、自然と人為の黄金比を追求し続けています。

その日の花を摘め———「今この瞬間」の哲学

__なるほど、ZIGGY CHENの真髄をひしひしと感じます。それに、今この瞬間を楽しむことの大切さは僕もすごく共感できます。

伊藤(憲):今この瞬間を生きる。これは紀元前1世紀の古代ローマの詩人、ホラティウスが詩の中に書いた「Carpe diem(その日の花を摘め)」と同じ精神です。

マウリッツォ・アルティエリ氏に会った時に、彼が言っていた言葉が僕の中でとても印象に残っています。

「僕たちの人生は、綱渡りのようにゆっくり、ゆっくりと一歩ずつを確かめるように揺れながら歩いていて、落ちたら、死だ。」

僕たちはいつ来るかもわからない死と隣り合わせで生きているのだから、後悔のないように、今を大切に生きるべきだ。という考え方です。

__ では、“POETOURNEY”のデザインのどんなところにその哲学を感じましたか?

伊藤(憲):先ほども少し話しましたが、例えば色々な作品に使われている切りっぱなしのディテールです。今期はシーズンタグの縁も切りっぱなしで、トップスの裾、ジャケットの内ポケットの処理なんかも、切りっぱなしのデザインを見ることができます。

ZIGGY CHENは今まで、裏地の細部に至るまで本当に丁寧に作っていました。もちろん今シーズンも狂気を感じるくらい作り込まれているのですが、こういうところはあえて手を加えず、原始的に切りっぱなしにしています。

これは生地がほつれて朽ちていく様子を、元々あったもの―――中国の原風景や芸術作品、そして命や時―――が失われていく過程の美しさに見立てたもののように思えます。

あと、SELVEDGE DOUBLE BREASTED COATに施されている切り替えには、セルヴィッヂ(生地の端)が使われています。僕はここからも、生まれてから死ぬまでの後戻りできない旅路を、一歩一歩進んでいく大切さを感じました。

__どういうことですか?

伊藤(憲):人生とは、生まれてから死ぬまでの始まりと終わりの物語であって、その途中に無数の「今この瞬間」がある。生地の両端にあるセルヴィッヂとは、いわゆる生地の織り始めと織り終わりで、そしてその間に生地があります。こう考えるとこのディテールは、人生のメタファーなんですよ。

__なにそれ、エっっっモい!

本当の豊かさはどこにある?———無為自然に生きるための服

__しかし、どうすれば「今この瞬間」を大切にできるんでしょうか。僕なんかは、やっぱり将来のことや、他人からの目が気になってしまいます。

伊藤(憲):周りに左右されず無為自然に、ありのままの自分で生きることだと思います。今シーズンのZIGGY CHENの作品は、俗世から距離を置いて自分を保とうとする生き方に寄り添ってくれます。

樹木や土のブラウンブラック、草葉のブルーグリーン、雲のスモークホワイト、大地のサンドベージュといった自然由来の色や素材が、着用者を自然の中に導きます。

加えて“POETOURNEY”の作品はいつにもまして着心地が素晴らしい。すごく軽いし、夏場も快適に。暑くても一瞬一瞬を楽しめるような作りになっていて、まさに今この瞬間を大切に生きるための服なんですよ。

__おおー。無理なく、肩肘張らずに着られるんですね。

伊藤(憲):そうです。これまでのシーズンに比べて、ディテールがシンプルになり、ある意味で原点に回帰したところも、同じ切り口で解釈できると思います。

__どういうことでしょうか?

伊藤(憲):直近数シーズンのZIGGY CHENは、どちらかというと華やかなデザインのものが多かったですよね。でも今期はとてもシンプルで、より色んな人に楽しんでもらえるコレクションになっています。

__ヘタをすると、ZIGGY CHENを知っている人でも、一見してZIGGY CHENだとはわからないくらいにシンプルなものもありますよね。

伊藤(憲):でもZIGGY CHENらしい、掘り下げていく楽しみはしっかり盛り込まれています。

だからこそ周りの目を気にせずに、純粋に自分の内側から楽しさが込み上げてくる。着ていて心地がいい、かっこいいと思う気持ちを大切にできる。さっき言った「俗世から距離を置いて、自分を保とうとする生き方」ができるんです。

あなたはどう読む?——ZIGGY CHEN作品に織り込まれた無限の物語

__例えばどんなところに、掘り下げていく楽しみがあるんでしょうか。本来は手に取った人の特権かもしれませんが、少しだけ教えてください。

伊藤(憲):例えばこのSIDE TAPED WORKER TROUSERですね(SOLD OUT)。サイドラインのところに実はポケットが隠されているんですが、これがまるで地面に落ちている葉をのけて、その下にあるものを覗くみたいで素敵だなと思います。

__そのパンツ、めちゃくちゃ気になってます!白もニュアンスのある色で、好みなんですよね。

伊藤(憲):このパンツの生地は、墨染めを施しているんです。だからまるで空に浮かぶ雲のように、影のようなニュアンスがでています。

よく見ると自然界の色は、単色ではないんですよ。色んな白が混じって雲ができていますし、空の青、草葉の緑も同じです。色んな色が集まって一つの色を作っているんです。

白も200色あるらしいですからね。

そういう意味で、ASSYMETRICAL PATCHWORK T-SHIRTは自然界の色を表現した作品です。一つのものを拡大鏡で見たかのように、何種類もの生地、色味、染めを組み合わせて1着の服を作っているんです。だから平面的にならず、奥行きのある仕上がりになっています。

まるでビザンツのモザイク画のようです。モザイク画というのは、石やタイル、有色無色のガラス、貝殻、木などを使って描かれる絵画のことですが、このTシャツはまさにそういうイメージなんですよね。

__このパッチワークの技術もすごいですよね。四角の生地を繋ぎ合わせてTシャツの形にしていて。

伊藤(憲):本当に。Tシャツの上に縫い付けてパッチワークにしたんじゃないんですよね。何度も話に出てきているSELVEDGE DOUBLE BREASTED COATも同じような手法で作られていますが、いったいどうやったらこんなことができるのか……。

Tシャツのパッチワークの部分は切りっぱなしになっているので、着ていくにつれてほつれ、美しく変化をしていきます。

今シーズンのすべての作品に感じますが、「破壊」と「再生」をイメージさせるZIGGY CHENらしい手仕事と美しさを感じます。

COLLAGE SHIRTも同じようにパッチワークで表現をしているですが、このシャツはぜひ裏でも着て欲しいです。

__!?

伊藤(憲):通常表にくる面を裏に用いていて、裏側で着用する際はきれいな接合面になるので都会的でクリーンな印象になります。失われていく自然と都会の、デザインのバランスの良さを感じ取れます。

__うおお、欲しい!先ほどのパンツのところで「地面に落ちている葉をのけて」という話が出ましたが、MANDARIN COLLAR HYBRID DRESS SHIRTも同じディテールがありましたよね。

伊藤(憲):そうですね。カフスにZIGGY CHENが得意とする非常に細かいギャザーが入っていますが、これが別の生地で一見わからないように隠されています。そもそもこのシルクの生地自体が、色味としても、透けて見えるほどの生地の薄さにしても、まるで地面に落ちている枯れ葉のようですよね。

随所に入っている切りっぱなしのディテールを含め、朽ちてなお美しい自然に共通する魅力がある1着です。

あと今期のシャツは背中のヨーク(肩の部分のパーツ)もすごいです。前シーズンから続いているディテールですが、普通は直線になるヨークがラウンドをしているんです。

こうすることで人体の背中の曲線に生地が沿うように作られています。他にもこうやって3D視点で作られている作品はありますが、いずれも手仕事で美しいシルエットを構築しながら、人体が持つ曲線を活かす作りになっていますね。

本来「シルエットを作る」と「人体に沿わせる」は相反する要素なのですが、これもまたZIGGY CHENはうまくバランスをとっているんですよ。流石の一言です。

__PLEATED EXTRA WIDE LEG TROUSERSに入っている切り替えも、さりげないのに実はよくわからないディテールです。

伊藤(憲):まるで普通のクリースのようにラインが入っているんですけど、これ全部切った後に縫い合わせているんですよね。別の生地同士を縫い合わせたわけじゃなくて、1枚の布で作っているんです。

__だから厳密には切り替えじゃない。切り替えてないから。

伊藤(憲):地味なところですが、後ろポケットの縁は手で刺繍が入れられています。切って、縫い合わせ、新しいものを作り上げる。コロナで分断されてしまっていた繋がりからの回復もイメージさせますね。

RELAXED SHORT SLEEVE SHIRTも面白いです。

__気になります!

伊藤(憲):今シーズンで一番シンプルなシャツかもしれませんが、だからこそ色気を感じます。

グリーンとブラウンの2色で織られた千鳥格子の生地なのですが、すごく細かくて。これをZIGGY CHENでは「Shadow Puppytooth」と呼んでいます。

PANELLED 2B BLAZERやCLASSIC WORKERS COAT WITH CONTRAST POCKETSに使われている大ぶりの千鳥格子は「Overdyed Houndstooth」です。



通常千鳥格子は、ハウンドトゥースとも言います。猟犬(ハウンド)の牙に形が似ていることからこの名前になっています。それに対して、この小ぶりな千鳥格子をパピー(1歳以下の子犬)の牙と名付けちゃうあたり、すごく遊び心を感じますね。成犬と子犬。ここにも時の流れを感じさせます。

__うおおー!面白い!

伊藤(憲):OVERSIZED SHORT SLEEVE WORKER JACKETの生地もすごく道教の流れを感じます。

__その心は!?

伊藤(憲):荘子は、有名になることではなく隠遁者であろうとしました。

「祭りのために綺麗に飾られた牛は、最後には生贄として命を落としてしまう。わたしはまだ泥の中で遊んでいたい」

そんな、泥を感じるような風合いの生地です。

最近よく「あの人って実はめっちゃおしゃれだったんだ」って、後からじわっと思ってもらえるような人になりたいなと思うんです。それくらい自然にその人のファッションが空間に溶け込んでいるのが素敵だなって。そんな気持ちにすごくフィットしてくれた作品です。

__いやあ、これだけ色々なディテールが紐解けるのは面白いですね。

伊藤(憲):ZIGGY CHENの作品は、まるで村上春樹の小説のように、開かれた結末(受け手に解釈を任せるような描き方)をしています。

例えば僕はSELVEDGE DOUBLE BREASTED COATのシームを自然と生活とのバランスのように見ました。私たちの暮らしは、破壊とともにあること。しかし、心がけ次第では再生とともに豊かに共存していけるという解釈です。

でもあのシームを樹木の根に見立てる人もいます。真っ直ぐ伸びる根もあれば、曲がる根もあり、途中で途絶える根もある、というわけです。

どちらが正解ということはありません。あえて言うならどちらも正解なんです。もちろん他の解釈があってもいいですよね。そうやって色々な解釈が成立するほど、ZIGGY CHENの作品には無数の物語が織り込まれ、語られているんです。

今シーズンのテーマのタグを一つとっても、いくらでも想像の余地がありますからね。

__というのは?

伊藤(憲):今シーズンのタグは、道教家がモチーフになってはいますが、目から光線のようなものが出ています。僕はこのタグだけでも、3つ4つくらいの解釈があると思っています。ぜひ想像力を働かせて、色々と考察してみてほしいですね。それもまた、ZIGGY CHENの大きな魅力の一つなので。

__うーん、相変わらず深くて濃い話をありがとうございました!

<NEWS>
・4月15日に新店舗kuneが岩手・花巻にOPEN。
・ZIGGY CHEN 2023SS 2ndデリバリーが3店舗に到着。

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