Maurizio Giacomo Altieriは今どんな活動をしているのか? – 現在進行形のvn0_worksの一部について
みなさんこんにちは。CONTEXT TOKYOの伊藤香里菜です。
知る人ぞ知る、アーティストMaurizio Altieri(マウリッツオ・アルティエリ)。
シューズプロジェクトm_moriabc(メモリア)を始めとした彼の作品群は、現在でも謎が多く残されており、それが魅力の1つでもあります。
そんな彼の活動はさらに多岐に渡り、発展し続けています。
今回はヴェールに包まれた彼の現在進行形の活動を、実際にCONTEXTにてオーダー制でご紹介しているプロジェクトを中心にお話できればと思います。
明日になれば、新たな要素が追加されてもおかしくない、自由で、制限のない、彼の「今」が詰まったプロジェクトの一部をお楽しみください。
プロジェクトvn0_worksについて–––靴だけに留まらない「身体の研究」
現在Maurizioのプロジェクトは、靴だけに留まらず、服、ジュエリー、鞄、オブジェクト等とその活動の枠を広げています。
その総称はvn0_worksとまとめて名付けられ、読み方はウノ・ワークス。
Vは、Maurizioが好きな時代古代ローマの言語であるラテン語でウーと発音することから、VをUと読みます。
また、o(オ)は数字の0(ゼロ)と表記され、Maurizioらしい言葉遊びを感じられます。
vn0_worksの最新の状況は、彼が運営しているInstagramでのアカウント「vnin_izi0」で確認することができます。
アカウントを見ていただくと分かるように、作品の画像やコンセプトが投稿されるアカウントで、彼のプロジェクト群が一堂に介すプラットフォームとなっています。
しかし中には抽象的な内容で、なかなか実態を掴みきれない…といった疑問が浮かぶ投稿も少なくないです。
今回はこの中から実際にCONTEXTでご紹介している0o0o0o(ワンオブワンオブワンオブ)とvnospinari0(ウノスピナーリオ)プロジェクトについて、紐解こうと思います。
「個性」を持った人々の関係性を表す指輪–––0o0o0o from vn0_ works
最初にご紹介するのは0o0o0o(ワンオブワンオブワンオブ)です。
One of One of One ofと読むように、「1つの1つの1つの…」と連続した1つの「何か」が続いていくのですが、何が続いていくのかは示されていません。
Maurizio自身はこれついて、人々の「個性」が続いていくイメージを持っていると話しています。
One of の後に来る言葉をあえて空白にすることで、1つの単語では簡単に片付けられない多様な「個性」をこの名前に託しています。
それでは彼のコンセプトを見てみましょう。
The three primary geometries interact with one another in an interlocking sequence.(3つの主要な図形は、互いに連動しながら影響し合う)
The deformed circle.(歪んだ円)
The conformed square.(形づくられた正方形)
The in/formed triangle.(変形した三角形)
The anatomical relevance of the adjacent fingers.(隣接する指との解剖学的な関係性)
なんともコンセプチュアルな文章ですよね。実際に作品を見て、解像度を上げていきます。
アートピースのようにも見える0o0o0o。これは彫刻的な造形をした「指輪」です。
もちろん、単なる指輪ではありません。
0o0o0oの起源は、Maurizioがこれまで感じてきた人々の「個性」。
個性を持った他者が、自分自身にどのような影響を与えるのかを可視化したプロジェクトです。
作品のディテールを見て、そのコンセプトの意味を探りましょう。
本体は知恵の輪のように型取られたれた3連の指輪です。
写真を見ていただくと分かるように、シューズプロジェクトm_moriabcでの時間軸、過去・現在・未来を表現した円形(○)・四角形(□)・三角形(△)のモチーフが連なっています。
ここから、0o0o0oは彼の活動の延長線上にあり、変わらない哲学を感じられます。
3つのモチーフはそれぞれ完全に溶接されておらず、一定の範囲内で自由に動かすことができます。
実際に動かしてみたイメージとしては知恵の輪そのものです。
これを指にはめると、固定される仕組みになっているんです。
また、それぞれの図形は歪んでいるのですが、これもMaurizioの意図的なデザイン。
人間も”完璧”が無いように、1つ1つの輪もまた不完全の美しさを表現しています。
さらにMaurizioは0o0o0oの仕組みについて以下のように話しています。
「社会生活の中で、人々は誰かに頼らなくては生活することができない。
つまり人は1人で生きずに、何かに依存しなければならない。
しかし依存しすぎた先にある、他者と溶接された関係性は必ずしも健全とは言えない。
行き過ぎた依存関係には、人間らしさの欠如が伴う。
お互いにとって健全なのは、個人として自立した精神を持ちつつ、必要な時に手を取り合い生きることなのだ。」
お互いに必要な絆と、お互いに必要な自由な動き。まさに現代社会を生きる私たちです。
0o0o0oは個性を持った私たちに向けて、健全な人間関係とは何かと考えてみるきっかけを与えてくれるのです。
こちらの写真は0o0o0oを付属する土台にはめた全体像です。
実は土台もある角度から見ると、○□△の基本図形になっています。
指輪の力が必要な時は指にはめ、そうでない時はオブジェとして置くことも可能です。
他にもstoneと呼ばれる着脱可能なパーツがついており、その日の気分によって取り付けて着用することもできます。
土台を包み込むボックスにもMaurizioのこだわりを感じらます。
グラスファイバー製のキューブ型ボックスの中には、さらに白いキューブボックスが入っています。
中には彼が用意した古紙に印刷されたドローイングや、彼の友人が書いた詩が入っています。
オーダー方法–––好みの素材を選んで、自分の個性を表現する
0o0o0oはオーダー時に素材の選択をすることができます。
三連あるモチーフの内、ゴールドのモチーフをいくつにするかが基準となって、シルバーやアイロン(鉄)、ブロンズ(青銅)、ブラス(真鍮)などと組み合わせて制作できます。
例えば、CONTEXTのサンプルは一連のみゴールドのバージョンで、円形(○)がイエローゴールド、四角形(□)がブラス、三角形(△)がブロンズ製となっております。
好みや用途に合わせて、変化する指輪ですので楽しんで決めてみてください。
実際につけてみて–––変化する「個性」を楽しむ0o0o0o
0o0o0oは右もしくは左の中指に装着することが想定されています。
気になって調べてみたのですが、右の中指は直感力を高めると言われており、魔除けや邪気を払う力があると言われています。
もう片方の左手中指には「円満な人間関係を構築する」「協調性を高める」という意味が込められているそうです。
0o0o0oに込められた思いが、十分に発揮されるように考えられているのでしょう。
指輪は、衣服や他のジュエリーと違い、身に付けていれば、いつでもどこでも全体が見えます。
ふとした瞬間に指にはめられた0o0o0を見ることで、0o0o0oを付けている時にしか現れない「間」が生まれます。
個人的には指から外してじっくり見る時間も好きで、ずっと見ていたくなる特別な力が0o0o0oの造形に詰まっています。
流れる時間の中で、自然と一呼吸置く動作が生まれます。指輪を見つめながら何かを深く考えるのも、その美しい造形を見つめ続けるのも、個人の自由。
そんな楽しみがある指輪だなと思いました。
使い込むほど変化していく指輪の質感も、0o0o0oの醍醐味です。
私たちの人間関係や個性も変化するように、指輪も各々の個性に沿って仕上がっていくのでしょう。
「自分」と「何か」を繋ぐ鎖–––_vnospinari0 from vn0_works
次にご紹介するのは_vnospinari0(ウノスピナーリオ)です。
まず、彼のコンセプト文章を訳してみます。
a chain – begins / ends(その鎖は 終わり、始まる)
a body as its closure(鎖の閉鎖体としての身体)
a bridge linking selves(自己を繋ぎとめる橋)
the primary shapes(主たる図形)
circle _ triangle then square(円、三角形、そして四角形へ)
square_ triangle then circle(四角形、三角形、そして円へ)
the twisted ladder(ねじれた梯子)
thorns resemble calls(棘は呼び声に似ている)
calls resemble wounds(呼び声は傷に似ている)
wounds resemble rhythms(傷はリズムに似ている)
rhythms resemble thorns(リズムは棘に似ている)
先にご紹介した0o0o0oと同様、抽象的な文章ですね。
作品を見ながら、もう少し噛み砕いていきましょう。
コンセプト文章の1文目にもあるように、vnospinari0は一言で表現すると「鎖」です。
個性を持った人々の人間関係を可視化した0o0o0oに対して、vnospinari0は人々との「繋がり」そのものを表しています。
誰もが経験する様々な繋がりを可視化できるような鎖をデザインし、プロトタイプの作成を経て発展したプロジェクトがvnospinari0です。
人間は誰かと向き合うと、強い絆を感じたり、時には分断を経験し、別れを偲んだりします。
Maurizio自身は「人間の繋がりとは、同時にお互いを拘束し合っていること」と話しており、「繋がり」という言葉1つ取っても、その状態によって様々な人間模様が浮かんでくるのです。
1番目の角のあるモチーフが四角形(□)、3番目の先の尖ったモチーフが三角形(△)、5番目の角が取れたモチーフが円形(○)
vnospinari0で連なる輪1つ1つは、こちらも単なる金属の連なりではありません。
写真をよく見ていただくと、0o0o0oで用いられた円形(○)・四角形(□)・三角形(△)モチーフの輪が連なっています。
「繋がり」というvnospinari0のコンセプトの中には、これまでMaurizioが大切にしてきた過去・現在・未来という時間軸を繋ぐ意味も込められているのでしょう。
ある一部分には、輪の中に埋め込まれた粒のようなモチーフが見られます。
これはコンセプト文章の中にある「棘」をさし、Maurizio自身は「種子」とも表現しています。
種子の繋がりはまるでDNAの連なりのよう。
棘(または種子)は、場所によってはくるくると回る仕様になっており、そのDNAが巡る、いわゆる輪廻転生のようなイメージも広がっていきます。
その繋がりが外れないように、繋ぎ留めるブローチもついてきます。
オーダー方法–––自分で決めた「距離感」を楽しんで
vnospinaro0の素材はゴールド、シルバー、ブロンズ(青銅)、アイロン(鉄)の中からお選びいただけます。
そして好みの長さにオーダーが可能で、写真1・2枚目が最短の長さの約63cm。3枚目は約123cmです。
それぞれの価値観の中にある距離を表現できるようになっています。
また、仕上げの加工もマット仕上げやブラック仕上げ等と決めることができるので、オーダーの際は希望の仕上げをお伺いして制作に入ります。
実際につけてみて–––安心する重厚感と有機的なしなやかさが特徴
私が初めて見た時の印象は、重くのしかかる枷(かせ)のようなイメージでした。
ですが実際に着けてみると、歪みながら変化する○□△のモチーフによって鎖にリズムが生まれ、意外にも有機的なしなやかさが感じられます。
そして程よい重たさを感じることで「自分はここに存在している」という不思議な安心感も生まれてくるんです。
「鎖」の意味を辞書で引いてみると「物を繋ぎとめるのに使う、金属製の輪を繋ぎ合わせたひも状のもの」と出てきます。
vnospinari0は「自分」と「他者」を繋げるものだけではなく、見失いそうな「自分自身」を繋ぎ止める役割も担うのでしょう。
自分の存在を確かめるための重たさや、まだ見ぬ新しい自分へと引っ張っていってくれるような力強さも感じられるのがvnospinari0の魅力です。
「自己」から始まる「繋がり」が見えてくる0o0o0oとvnospinari0
謎多きMaurizio Altieriのvn0_works。
彼の近年のプロジェクトからは「繋がり」やそこから生まれる「関係」のあり方について考える糸口が見受けられました。
今回は私なりの解釈も交えながら、紐解いていきましたが、私たち着用者に解釈の余白が残されているのも、彼が望む作品と私たちの「関係」の一部なのでしょう。
他にもたくさんのプロジェクトが現在進行形で進んでおりますが、今回はここまで。
東京・CONTEXTでは引き続きvnospinari0と0o0o0oをご紹介しつつ、他のプロジェクトの今についてもお話しできればと思います。
ご紹介していないプロジェクトに関して興味がある方は、ぜひお気軽にお問い合わせくださいませ。
書き手:伊藤香里菜(CONTEXT TOKYO スタッフ)
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