JAN-JAN VAN ESSCHE(ヤンヤン ヴァン エシュ)とはどんなブランド? – 境界・制限・排他もない自由な衣服
国内外問わず多くのファッションフリークを魅了するJAN-JAN VAN ESSCHE(ヤンヤン ヴァン エシュ)。V.O.Fのお客様の中でもファンが多いブランドです。今回は、そんなJAN-JAN VAN ESSCHE(ヤンヤン ヴァン エシュ)の魅力を改めて紐解いていきたいと思います。読み終わった後には、実際に袖を通してみたい気持ちにきっとなっているはずです。
デザイナーについて
JAN-JAN VAN ESSCHE(ヤンヤン ヴァン エシュ)は、ベルギー・アントワープを拠点にクリエーションを行っているブランド。
デザイナーはブランド名と同じJAN-JAN VAN ESSCHE(ヤンヤン ヴァン エシュ)。
アン・ドゥムルメステールやドリス・ヴァン・ノッテンなど「アントワープ・シックス」を輩出したアントワープ王立芸術学院を主席で卒業。ドリス・ヴァン・ノッテン賞も受賞するなど、在学中からすでに頭角を表していました。
2010年に初めてコレクションを発表。掲げたテーマは「YUKKURI(ゆっくり)」。
JAN-JAN VAN ESSCHE(ヤンヤン ヴァン エシュ)は、実は私たちの日本の文化からもインスピレーションを受けています。詳しくはまた後ほどに。
このテーマは、現代のワードローブに対するデザイナーとしての基本的な姿勢として今も大切にされています。
また、ビジネスパートナーであるPietoro氏もブランドにとって大きな存在。
ルックブックの撮影やスタイリング、Atelier Solarshop(直営店)の営業など、ブランド運営に欠かせない部分を担います。
JAN-JAN-VAN-ESCHE(ヤンヤン ヴァン エシュ)の特徴
そんな経歴を持つ、JAN-JAN VAN ESSCHE(ヤンヤン ヴァン エシュ)。まずは特徴から詳しく見ていきましょう。キーワードは大きく分けて2つ。「身体が衣服を形作るアプローチ」と「境界・制限・排他もない世界観」です。
身体が衣服を形作るアプローチ
JAN-JAN VAN ESSCHE(ヤンヤン ヴァン エシュ)の服作りは、衣服が身体を形作る鎧のような(例えばコルセットのように)古典的な西洋のアプローチではありません。真逆の「身体が衣服を形づくる」というアプローチをとります。衣服によって身体を縛られることがないので、開放感のある着心地が特徴です。
あくまでも、ファッションの主体は人(身体)。着た人がどう感じるのか、感覚や身体の美しい見え方を考えて慎重にデザインされています。
デザイナー本人が実際に服を着て生活しながら衣服を研究しているという話もあるほどです。
境界・制限・排他もない世界観
彼らの衣服作りは、年齢・性別・人種などあらゆる点においてボーダーレス。そのため採用されるデザインは、「男性・女性らしさ」あるいは「若々しさ」、「西洋/東洋」といった既存のカテゴリーから自由なものばかりです。
そのため、肩書を問わず、どんな人も「衣服を纏う」という喜びをしっかりと味わうことができます
こちらの動画は22SSのコレクションムービー。
ダンサーや音楽家。様々な人たちが登場してきます。ダンスの振り付けも自由で伸び伸び。袖を通したことの無い人でもなんとなく自由な感覚を掴めそうなムービーですね。
単に動きやすい服だけではなく、纏う人の精神も自由に解放してくれるということがビジュアルで表現されています。
モデルも多国籍。今となっては多国籍なモデルは当たり前に見かけることが多いと思いますが、JAN-JAN VAN ESSCHE(ヤンヤン ヴァン エシュ)は10年以上も前からずっと多様性や平和を大切にしたスタイルを貫いています。MOVIEやLOOKBOOKに登場するモデルは、なんとJAN-JAN VAN ESSCHE(ヤンヤン ヴァン エシュ)本人と普段から親睦のあるメンバー達とのこと。
一気にグローバル化が進んだ今日ですが、JAN-JAN VAN ESSCHE(ヤンヤン ヴァン エシュ)の服は、シームレスで自由。まさに世界を生きる私たち「世界人」に向けた衣服と言えるのではないでしょうか。
境界・制限・排他もない世界観はロゴにも現れています。
シンプルな円の中にJAN-JAN VAN ESSCHE(ヤンヤン ヴァン エシュ)の文字。円からは団結、繋がり、循環のイメージを連想します。
また、JAN-JAN VAN ESSCHE(ヤンヤン ヴァン エシュ)の展示会の際は、メンバーの手料理がバイヤーに振る舞われます。
彼らにとってファッションは独立した存在ではなく、あくまでもファッションは生活の一部。JAN-JAN-VAN-ESCHE(ヤンヤン ヴァン エシュ)という一つの世界を通して同じ時間を共有し、様々な国籍の人たちが言語を越えて繋がっていきます。
以上のように、「身体が衣服を形作るアプローチ」と「境界・制限・排他もない世界観」がJAN-JAN-VAN-ESCHE(ヤンヤン ヴァン エシュ)のデザインの根底にあります。
あえて一言でまとめるなら「自由」。「身体の自由」と「精神の自由」を絶妙なバランス感で衣服のデザインに落とし込んでいるブランドと言えるのではないでしょうか。
JAN-JAN-VAN-ESCHE(ヤンヤン ヴァン エシュ)の注目ポイント
先ほどお話しした特徴を踏まえて、JAN-JAN-VAN-ESCHE(ヤンヤン ヴァン エシュ)のデザインのポイントをみていこうと思います。
東洋と西洋の融合
JAN-JAN-VAN-ESCHE(ヤンヤン ヴァン エシュ)のデザインのインスピレーションの源は人類が培ってきた文化全般。よって、東洋と西洋の文化が混ざり合った絶妙なデザインが魅力です。
仕立ては西洋的ですが、襟を抜いて着ると美しいドレープと陰影が生まれます。
背中の語る余白や襟抜きの美しさと言えば日本の着物をイメージします。東洋と西洋。このバランス感が絶妙です。また、東北に根付く裂織りを活かしたプロダクトなど、私たちの日本の文化からインスピレーションを受けているものが多々あります。
クリエイションのインスピレーションとして、デザイナー本人が江戸時代後期に撮影された東北の農村地域に住む人々の写真集を挙げていたり、禅の思想に関する本なども読んでいたときもあったとのこと。
今回は日本的な視点で切り取ってみましたが、世界各国で培われてきた美しい文化が全てインスピレーションとなります。
シームレスパターン
素材の美しさを最大限に引き出すことを目指して、極限まで縫い目を減らすシームレスパターンを開発。その結果生み出される、独特の(しかし主張しすぎない)シルエットも同ブランドの衣服の大きな魅力と言えます。
削ぎ落としたディティールからは気品を感じますね。手引きで引かれるパターンはまさに彼らの美意識の妙です。
縫い目を無くすということは、境界線を無くすということ。そして、より自由に近づくということ。JAN-JAN-VAN-ESCHE(ヤンヤン ヴァン エシュ)の哲学がワンピースパターンによって表現されています。
天然素材の生地
JAN-JAN-VAN-ESCHE(ヤンヤン ヴァン エシュ)の衣服に使われる生地は天然素材。夏はリネン。冬はヤクウールなど。贅沢な素材使いが特徴です。
デザインがカジュアルでも素材はエレガントなものを使用したり、柔らかさやどこか温かさのある生地使いが特徴です。
こちらは、ネームタグ。
「NATURAL BROWN」の記載があるように、ありのままの色味も大切にしていることが分かりますね。人為的に加工しすぎるのではなく、出来るだけ自然体で。
JAN-JAN-VAN-ESCHE(ヤンヤン ヴァン エシュ)のおすすめアイテム
ここで24AWのアイテムを通してさらにJAN-JAN-VAN-ESCHE(ヤンヤン ヴァン エシュ)の魅力を見ていきましょう。
TROUSERS#78 OVERSIZED 6 POCKET DENIM
ストンと落ちるワイドシルエットが特徴のTROUSERS#78。
股下部分に組み込まれたガゼットがあることでしゃがんだり大きく動いた時にもまるで履いていないかのような履き心地になります。パターンは足を丸ごと一枚の布で包み込むワンピースパターン。
シームがないことで、さらに履き心地が良くなります。
まるで折り紙を折り合わせたようなフロント部分のアシンメトリーディティールにも注目。インナーにはドローコード。ベルトで締め付けることなく、着用する人に併せてフィットしてくれます。
細かいながらも身体が衣服を形作るアプローチならではのディテールです。
SWEAT#62 KIMONO COLLAR WOVEN SWEAT
こちらは日本の着物襟がデザインのベースとなったスウェット。着用した時の首後ろ部分の余白が美しく映えます。
裾にはドローコードがつくことで、シルエットも変えられます。ラグジュアリーで光沢感のあるヤクウールを生地に使用することで、カジュアルとエレガンスのバランス感が特徴。レギュラーカラーシャツなどとのレイヤードも面白そうですね。
BAG#37 SMALL CARRIER BAG
コットンにコーティングを施した光沢感のあるBAG。天然素材のみを扱うJAN-JAN-VAN-ESCHE(ヤンヤン ヴァン エシュ)の面白い素材使いのアプローチです。初めての1着としてスタイリングに取り入れやすいアイテムとなっています。
JAN-JAN-VAN-ESCHE(ヤンヤン ヴァン エシュ)のおすすめスタイリング
最後に、24AWのアイテムをメインにV.O.F各店舗のおすすめスタイリングを紹介していこうと思います。
CONTEXT ver.
都会的なオールブラックのスタイリング。MID NIGHTカラーのサコッシュはスタイリングのアクセントに。
TUNIC#37 Kimono Collar Loose Fit Tunic With Side Buttons Boiled Wool Silk Cloth Black
BAG#37 Small Carrier Bag Cotton Wool Washed Twill Midnight
TROUSERS#82 Tapered Leg Trousers Coated Cotton Ribstop Off Black
乙景 ver.
今期のシーズンテーマカラーであるMID NIGHTカラーをベースに、カジュアルなショートジャケットと綺麗めなドレスパンツでAラインシルエットにまとめて。
JACKET#58 Loose Fit Eisenhower Style Double Breasted Jacket Herringbone Yak Wool Black&White
TROUSERS#83 Oversized Dress Pants Cotton Wool Wash Twill Midnight
SCARF#33 Wrap Scarf Madrasⅱ Sand-Green-Burgundy
kune ver.
寒い地域では重宝するハイネックのニットにワックスドコットンの光沢感のあるパンツを合わせたシンプルなスタイリング。定番である手編みのビーニーで季節感をプラスして。
KNIT#67 Wide Fit Cable Knitted Turtle Neck Sweater Wool Lino White
TROUSERS#82 Tapered Leg Trousers Coated Cotton Ribstop Off Black
BEANIE#7 Hand Crocheted Beanie Wool Lino Anthracite
JAN-JAN-VAN-ESCHE(ヤンヤン ヴァン エシュ)はこんな人におすすめ
いかがでしたでしょうか。哲学、洗練されたパターンや生地選び、シルエット、着心地の良さ。どこを切りとっても魅力的なブランド。
AN-JAN-VAN-ESCHE(ヤンヤン ヴァン エシュ)は分かりにくいと言われることが多いのですが、それは決して派手なデザインのブランドではないから。ハンガーに吊るされているだけでは感じられない、袖を通した時にはじめて体感するじわっとした優しさ。着てみないと分からない魅力がぎっしり詰まっています。
心が満たされると余裕や余白が生まれる。余裕や余白があることで、周りの人に優しくできたりいつもは気づくことができなかった美しい木漏れ日に気づけたり。自分自身の真ん中から外へ意識を向けられるようになる衣服だと思います。
人が紡ぎ育んできた生活や文化。JAN-JAN-VAN-ESCHE(ヤンヤン ヴァン エシュ)というブランドは衣服を通して「人の豊かな心と可能性」を伝えたいのではないかと思います。
「一枚の布」というブランド哲学を持つISSEYMIYAKE(イッセイミヤケ)やkenzo(ケンゾー)、kanata(カナタ)のように日本的なアプローチや民族的なエッセンスが好きな方。
Dries Van Noten(ドリスヴァンノッテン)やAnn Demeulemeester(アン・ドゥムルメステール)のようなアントワープ6の系譜が好きな方。
Lemaire(ルメール)やJil Sander(ジルサンダー)、Maison Margiela(メゾンマルジェラ)のように、ミニマリズムの美学がお好きな方。
角度を変えて見てみると、様々な文脈から興味をもっていただけるブランドです。(V.O.Fではデザイナーズブランドのアーカイブの取り扱いと、買取も行なっています。)
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なんと言っても、JAN-JAN-VAN-ESCHE(ヤンヤン ヴァン エシュ)は「境界・制限・排他もない自由」が魅力なブランドなのだから。是非、自分なりにミックスしてJAN-JAN-VAN-ESCHE(ヤンヤン ヴァン エシュ)の世界を楽しんでみてもらえますと幸いです。
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— 追記 —
筆者はISSEYMIYAKE(イッセイミヤケ)の「一枚の布」の考え方とJAN-JAN-VAN-ESCHE(ヤンヤン ヴァン エシュ)の縫い目を無くすという考え方が交わるところに面白さを感じ、2つのブランドを掛け合わせたスタイリングを組んでみました。
Writer:Taketo Terui(kune STAFF)
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