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COLUMN

もっと自由にファッションを楽しもう!ファッション・カテゴライズの昔と今について考えてみた

日本のファッションは、カテゴライズされすぎていると思う時があります。

例えば、私伊藤香里菜は、初対面の人に「モード系の服が好きなんですか?」と聞かれたり、友人に「アルチザン系を着るよね」と言われたりします。

あながち間違ってはないのですが、服装のカテゴリーを決めつけられることに何か腑に落ちない瞬間があるのも正直なところです。

果たしてファッションのカテゴライズは必要なのか。

今回は私の中で芽生えたこの疑問に答えを見出すべく、難波功士氏の「族の系譜学」を参考に、戦後の日本に限定したファッション・カテゴリーの移り変わりとカテゴリーが生まれる条件について考察しながら、今を生きる私たちのファッションカテゴリーについて考えてみたいと思います。

〇〇族・〇〇系になるために必要だった「場所やお手本」―――戦後のファッション・カテゴライズの法則

戦後日本のファッションは、得てして大きな存在―――「みんなが集まる場所」や「みんなが知っている人」―――から生まれていました。

戦後の日本で初めてと言えるファッション・カテゴリーは、1960年代から1980年代後半に登場した、「竹の子族」や「フーテン族」と呼ばれる若者集団です。

代表的な若者集団「みゆき族」は、「アイビー」や「コンチネンタル」と呼ばれるファッションに身を包んだ男性たち、お手製のロングスカートやリボンを結んだスタイルの女性たちで構成され、みんなが銀座みゆき通りに集まっていました。

当時商店街の人からは、「銀座をふらつくだけの厄介者」として良く思われていなかったらしいのですが、この「ふらつく」ことこそがみゆき族としてカテゴライズされるに重要な条件だったのです。

というのも「族の系譜学」の難波氏によれば、みゆき族になる・もしくはみゆき族として認めてもらうには、まず銀座に集まってコミュニケーションすることが必要だったからです。

あくまで想像に過ぎませんが、銀座をふらふらする中で、お互いのファッションを見て「俺らっぽいファッションってこうじゃない?」というやりとりをしながら、みゆき族としてのアイデンティティを作っていったのでしょう。

1990年代から2000年ごろになると、「族」とは違う「渋谷系」「ビジュアル系」と呼ばれる「〇〇系」というファッション・カテゴリーが登場します。

これらはミュージシャンやコメディアンなど、求心力のあるアーティストのファッションから派生したカテゴリーです。

他人から○○系としてカテゴライズされる条件は、○○系アーティストの音楽を聴き、着こなしを取り入れること。それだけでした。

彼らのアイデンティティは、アーティストがお手本となって示してくれるので、みゆき族のようにみんなで集まってアイデンティティを作っていく必要はなかったのです。

このように今までは「みんなが知っている場所」と「みんなが知っている人」からファッションがカテゴライズされてきました。では、令和の時代のファッション・カテゴリーはどのような形で生まれるのでしょうか。

もはやカテゴライズできない現代のファッション

結論から言いますと、現代においてはファッションをカテゴライズする意味がなくなり始めている、と私は考えています。

なぜならインターネットの普及により、個人の趣味趣向の多様化・細分化が進んだからです。

VRトレーニング用ヘッドマウントディスプレイを覗くミズーリ州兵。
引用:Wikipedia

例えば「場所」一つとっても、昔と今では定義が微妙に変化してきています。

昔は「場所」と言えば、対面で人と触れ合える所を指しましたが、今では仮想空間やアバターを用いたバーチャル空間も「場所」です。Zoomなどもコロナ禍で生まれた新しい「場所」ですよね。

「あつ森」こと、Nintendo Switch『あつまれ どうぶつの森』では、アバターの着せ替えデータをMM6が配布し話題となった。

「場所」がファッションを生むのなら、現在のように場所が多様化すると、ファッションも多様化します。

すると「〇〇族」のような大きなファッション集団が形成されにくいため、結果としてファッション・カテゴリーが生まれにくくなっていならば、ファッション・カテゴリーなんて誰かが決めたような枠組みなんて捨てて、もっと自由にファッションを楽しもう!そう思いませんか?

「〇〇系」のファッション・カテゴリーも同様です。CDのミリオンヒットが連発していた2000年前後、「アーティスト」といえばテレビや雑誌に出ている、みんなが知っているミュージシャンや俳優などを指していたはず。

ですが今はYouTubeやInstagramでしか活動していないアーティストが、それぞれのファンに対して影響力を持っています。結果、「〇〇系」と呼ばれるようなファッション・カテゴリーが新たに生まれにくくなっているのです。

このように今の時代は、構造的にファッションをカテゴライズすることが不可能になってきているわけです。

冒頭でお話しした、服装のカテゴライズについて私が腑に落ちなかった理由には、このように〇〇族や〇〇系から、大きく変わった現代の状況に理由があるのだと思います。

その人だからこそ巡り合えた人がいて、趣味があって、価値観があるはず。そうして形成した「自分」を表現するファッションにおいては、もうカテゴライズなんて必要ないのではないでしょうか。

枠にとらわれないファッションを楽しむ時代

ファッション・カテゴライズの文化が根強くあった昔と比べて、今はその文化が緩やかに崩れ始めてきているような気がします。

あらゆるファッションの境界線がなくなっていく現代は、よりファッションを楽しむのにもってこいの時代だと私は思います。

ここまでジャーナルを読んでくれた皆さんも、もし自分の今のファッションに行き詰まりを感じていたら、一歩踏み出して、別の視点からファッションを楽しんでみてください。

東西各店では、現在春夏の衣服が充実しております。皆さんの新しいファッションを一緒に探すことができればと思いますので、ぜひ気軽にお店に遊びにきてくださいね。

〈参考文献〉
難波功士『族の系譜学』

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書き手/伊藤 香里菜(CONTEXT TOKYO スタッフ)
編集/鈴木 直人(ライター)