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JAN-JAN VAN ESSCHE 2022-23A/W “今シーズンおすすめしたい逸品”【京都・乙景編】

【考察】JAN JAN VAN ESSCHE が 2022-23A/W COLLECTION “A HORIZON” で伝えようとしたことではライター鈴木による、今季のJAN JAN VAN ESSCHEのコレクション考察を書かせていただきました。

では、京都・乙景、東京・CONTEXTそれぞれの店主は、2022-23A/W COLLECTION “A HORIZON”をどのように受け止めたのでしょうか。

“今シーズンおすすめしたい逸品”では今季のJAN JAN VAN ESSCHEの作品の紹介を通じて、彼らが感じた2022-23A/W COLLECTION “A HORIZON”について話してもらいました。

それでは、まずは京都・乙景店主、山下恭平の“今シーズンおすすめしたい逸品”からお楽しみください。

「ストライプ、ボーダーの使い方にJJVEの奥深さを見た」今季の第一印象について

__最初に、JAN-JAN VAN ESSCHE 2022-23A/W COLLECTIONの第一印象から教えてください。

山下:JAN JAN VAN ESSCHEはバイイングの前に、LOOKBOOKやサンプルの生地を送ってくれるのですが、それを見たときの印象は「すべてのルックにストライプ、ボーダーを使っているんだな」でした。

気づいてすぐに過去のLOOKBOOKも確認したんですが、今季ほど柄を使っているシーズンはありませんでした。もう明確にストライプ、ボーダー推しだったんです。

__実際、乙景でバイイングした作品もストライプ、ボーダーが多かったですよね。

山下:どちらかというと柄物ってバイイング全体で見るとスパイスになりがちですが、JAN JAN VAN ESSCHEの提案が素晴らしすぎて、自然とバイイングのメインが柄物になっていました(笑)。あれだけのものを見せられたら、もう仕方ないですよ。

__あれだけのもの?

山下:例えば“線”の見せ方です。COTTON LINEN CONTRAST STRIPE、BLACK MALE
NATURAL STRAIPE、BONE STRIPED COTTON CLOTHなど、わかりやすいものでも本当に色々なストライプ、ボーダーを見せてくれました。

同じ“線”でも生地の表情でこんなに変わってくるんだ、って感動しました。

あとは柄の合わせ方もすごかった。

__コレクションムービーでも、ストライプのシャツを着て肩から別のボーダーのニットをかけていたりしていましたね。

山下:ボーダーにボーダー、ボーダーにストライプなんて、一般的なファッションの“常識”ではご法度と言ってもいいくらい、NGコーデのど真ん中ですよ。でもJAN JAN VAN ESSCHEはそれをここまで洗練させて見せてくれた。

“常識”に囚われてファッションをするなんてナンセンスだ、というメッセージを感じましたね。

乙景にとってはボーダーにボーダー、ボーダーにストライプという提案は挑戦的でしたが、彼らが自信を持って提案してくれたから、僕たちも迷いなく提案できました。

もう少し混み入った話をするなら、衣服にここまで深い哲学を込められるんだな、という点にも衝撃を受けました。

__どういうことでしょうか?

山下:日本では縦縞をストライプ、横縞をボーダーと呼びますが、海外ではどちらもまとめて縞模様のことをストライプと言います。だからアメリカの国旗もSTAR&STRIPE(星条旗)って呼ぶわけです。

2022-23A/W COLLECTION “A HORIZON”のイメージソースはスイス人写真家アンネマリー・シュヴァルツェンバッハ(1908-1942)の『Voyages in Afghanistan(アフガニスタン旅行記)』という写真集で、愛車のフォードで行った第二次世界大戦直前に行ったヨーロッパからアフガニスタンへの旅を記録したものでした。

だから今季の作品には中東の民族衣装をもとにしたものが多いんですが、この中東の国々にもストライプを使った国旗を掲げているところがけっこうあって(アフガニスタン、イラン、イラク、シリアなど)。

引用:外務省

で、調べてみると国旗に使われる、ボーダーを含むストライプって“独立”とか“自由”、“解放”っていう意味合いがあるそうなんです。これってまさに鈴木さんが考察記事で触れていた「既存の境界線を乗り越える」っていう今季のテーマと一致するんですよね。

__確かに!先ほど話に出た 「同じ“線”でも生地の表情で見え方が変わってくる」「ボーダーにボーダー、ボーダーにストライプを合わせても成立する」というのも、そこにつながりそうですね。

つまり、互いは違う“線”で同じではないけれど、スタイリング=全体としては共存できるというメッセージなのかもしれない。

山下:そうなんです。今季は、ストライプ、ボーダーの使い方にJAN JAN VAN ESSCHEのクリエイションの奥深さを見た気がします。

「JJVEにとって、現時点でのワイドデニムの理想系」 “TROUSERS#67” SUMI COTTON DENIM

__では今回おすすめしたい逸品は、どの作品なんでしょうか?

山下:”TROUSERS#67″と”JACKET#49″、どちらもSUMI COTTON DENIMの作品です。

この素材は一見するとストライプやボーダーではありませんが、鈴木さんが考察記事でも触れていたように“ブラックデニムの縦落ち”という形で、ストライプを表現したものです。

“TROUSERS#67″に関しては僕から紹介してもいいのですが、実際に買って履いている鈴木さんからまずはお話を聞きたいなと思っていて。

__逆インタビューですか(笑)。

山下:だって鈴木さん、22S/Sでも同じ:”TROUSERS#67″のAIZOME DENIMを買って履いてたでしょ?それならやっぱり鈴木さんに話してもらわないと(笑)。

__以前自分のInstagramで紹介しようとして3000字くらい書いて文字数オーバーになったくらいなので、控えめに喋りますね。

山下:そうしてください(笑)。

__”TROUSERS#67″のSUMI COTTON DENIMって、さっき山下さんが言ったように縦落ちしたヴィンテージのブラックデニムをJAN JAN VAN ESSCHEのフィルターを通して表現した一本だと思っています。

僕が縦落ちしたヴィンテージのブラックデニムを作るとしたら、ケミカルな染料で染めたブラックデニムを洗い加工にかけて作ります。もしかしたらレーザー加工技術を使って、リアルヴィンテージを模倣するかもしれない。

でもJAN JAN VAN ESSCHEたちはそれをしませんでした。自然に優しい墨染で糸を染め、これを無染色の生成りの糸と組み合わせて、「縦落ち風の柄」を作ったんです。

山下:とんでもない手間がかかってますよね。

__工場との間で何度も何度もディスカッションが重ねられたことを思うと、珠玉の生地ですよね。

で、”TROUSERS#67″ではこの生地を、サイドシームなし、コンパクトなウエストとズドンと落ちるJAN JAN VAN ESSCHEならではのエレガントなパターンに落とし込んだ。このバランスが本当に素晴らしい……というのが僕の感想です。

山下:まさに鈴木さんの言う通りだと思います。僕としては、今回JAN JAN VAN ESSCHEが22S/Sと同じ型=#67と#66(V.O.F取扱なし)で展開したということに注目しています。

__詳しく教えてください。

山下:JAN JAN VAN ESSCHEは毎シーズン、マイナーチェンジを繰り返しながら作品をブラッシュアップしてきました。特に秋冬シーズンはコレクションを“PROJECT”と呼んで、挑戦的なモノづくりをしています。なのに、#67と#66はS/Sからそっくりそのまま継続したんです。

これはもしかしたら、JAN JAN VAN ESSCHEにとって、#67と#66が現時点でのワイドデニムとテーパードデニムの理想系だからなのかなと思って。

__JAN JAN VAN ESSCHEが使うデニムは織り幅の狭い機械で織るので、一般的な織り幅の生地とは違うパターンを引く必要がある、という話を彼らと親交の厚い方から聞いたことがあります。

このことを踏まえると、山下さんの言うように「現時点では、改めて作り直す必要はない」と考えたのかもしれませんね。実際、#67のデニムを2本持っている僕としても、これ以上のワイドデニムは想像がつきません。

ぐるぐるぐると3回ロールアップすればカジュアルになりますが、それを2回、1回に減らすだけでパターンの持つエレガントなムードが前面に出てくる。とても懐の深いパンツだと思います。

“TROUSERS#67” SUMI COTTON DENIMは、僕からも猛プッシュしたい1本ですね。

「5年後、10年後の姿を見てみたい」”JACKET#49″ SUMI COTTON DENIM

__では”JACKET#49″ SUMI COTTON DENIMはどうでしょうか?

山下:古き良きアメリカを裏テーマに掲げていた22S/Sではアメカジの定番デニムジャケットを作ったJAN JAN VAN ESSCHでしたが、今季は同じくTHE アメカジと言えるライダースジャケットをデニムで作ったわけです。

構造について話すと、2022S/Sシーズン、買ってよかったものは?【乙景店主・山下恭平編】で、S/Sのデニムジャケットが古い織機(旧式力織機)で織られた生地をそのまま裁断せずに使っていることに触れましたが、今回もそれ、やってます(笑)。

__デニムジャケットに比べると遥かに作りが複雑なライダースジャケットでもやってんのかあ……。

山下:今回は着丈が29インチ(約73cm)になっています。あくまで推測ですが、やっぱり生地を切らずに使っている可能性がある。

あとはボタンの付け方ですね。

__ボタンですか?

山下:一般的なダブルのライダースはジップの開け具合でシルエットをコントロールしますが、JAN JAN VAN ESSCHEはこれをボタンで作っています。このボタンの位置が絶妙なんです。

ボタンを全部留めるとけっこうスマートなシルエットになるんですが、上から1つ、2つ、3つと外していくと驚くべきことに気づきます。「みんな違って、みんないい」んです。

__留めるボタンの数によってシルエットが大きく変わり、その全部がカッコいい?

山下:その通り。個人的には一番上のボタンだけを留めて襟を立てた着こなしが好みですね。この時のAラインシルエットが本当にきれいで。

めちゃくちゃ地味な話なんですけど、ボタンのつける位置ってものすごく大事だし、デザイナーが思ったように工場につけてもらうのもけっこう難しいことだと思うんですよ。

工場からすれば一般的な位置が一番つけやすいわけから、それを微調整してつけてもらうためには、デザイナーと職人の信頼関係が不可欠です。

このライダースジャケットには、そういうJAN JAN VAN ESSCHEのブランドとしての姿勢みたいなものも表れていると思います。

__どんな着こなしを提案したいですか?

山下:着丈が長めのシャツをインナーに合わせた、Aラインのスタイリングですね。

今季の乙景では、ショートジャケットをメインにバイイングしているんですが、これは長短のレイヤードに挑戦してほしいという考えからでした。

ここ最近ずっとビッグシルエットがトレンドだったので、知らないうちに手持ちのシャツなんかも長めの着丈のものが増えているんと思うんです。

もちろん長長の重ね着は安定感があるんですが、今季はそこにショート丈のアウターを足して長短のスタイリングを楽しんでほしいなと。

例えば白や柄物のロングシャツに、ワイドなスラックスなんかを合わせて、ライダースのボタンは一番上だけ留める。そうやってきれいなAラインシルエットを作る、みたいな。

このレイヤードは中に着るシャツの丈の長さがすごく重要なので、そのあたりはぜひ店頭で一緒に悩みたいですね。

__1着で存在感のある作品ですが、こうやって着てみるとけっこう着倒せそうですね。

山下:JAN JAN VAN ESSCHEとかの作品を手に入れると、ディテールがどうとか、構造がどうとか、哲学がどうという話で満足してしまうところもあるんですけど、それだけじゃもったいないと思うんです。

やっぱりファッションに落とし込んで、着て、楽しんでナンボ。人にもよりますが、世の中の大半の服よりは遥かに高価なものなので、大事にしたいという気持ちもわかります。

でもデニムって本来労働着ですから、どんどん着て、ガンガン洗って、なんならパンツはお尻が擦り切れたり、ライダースは襟が立たなくなったりするまで着てほしいんですよね。

__うわあ、それ見たいですねえ。

山下:特にライダースは、“渋い”っていうよりかはファッション性が強い作品だと思っているので、若いお客様に手に取ってもらいたいって思っていて。

で、歳を重ねていきながら渋く仕上がっていくライダースと一緒に自分も渋くなっていって欲しいなと。

5年後とか10年後に、そのくたくたになったジャケットを着て「山下さん、このライダース、こんなになりましたよ」「おお、めちゃくちゃ渋なったなあ」とか言いながら、一緒にお酒を飲みたいですね。

__めちゃくちゃいいじゃないですか、それ。

山下:でしょ。もちろん他の作品もですけど、特にこの作品は、そうやってデニムと一緒に成長していってくれる人のところに嫁に行ってくれたらなと思ってます。

__今日はありがとうございました。

<NEWS>
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