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JAN-JAN VAN ESSCHE 2022SS “今シーズンおすすめしたい逸品”【東京・CONTEXT編】

春の始まりとされる立春も過ぎ、また今年も冬が終わるのかと寂しいような、嬉しいような、そんな心持ちです。

東京・CONTEXT、京都・乙景にはすでに2022S/S COLLECTIONが続々と到着し始め、季節の移ろいよりも一足早く、店内が春めいて来ました。

そんななか、今回はCONTEXTの店主伊藤より、JAN-JAN VAN ESSCHE 2022S/Sについて、コレクションの印象やバイイングのテーマ、そしておすすめしたいアイテムや素材などを語ってもらいました。

「“それでも僕たちは前に進まなきゃいけない”というメッセージを感じた」———2022SS COLLECTION の第一印象

__2022SSのJAN JAN VAN ESSCHEのテーマは“CYCLE”となっていましたが、伊藤さんは今季のCOLLECTIONからどんな印象を受けましたか?

伊藤:「それでも僕たちは前に進まなきゃいけない」という、エネルギーに満ち溢れた前向きなメッセージです。

__どこにそんなメッセージを感じたのでしょう?

伊藤:バイヤー用の資料の封を開けたときから、今期のCOLLECTIONのものすごいエネルギーを感じていました。

コロナ禍でパリにバイイングに行けなくなってから、JAN JAN VAN ESSCHEは事前に資料を送ってくれるのですが―――彼らは毎回そこに手書きのメーセージを書いたポストカードと生地サンプル、ちょっとしたお土産を添えてくれます。―――封を開けた途端に、今季のテーマカラーであるポピーレッドのヴィジュアルが目に飛び込んできたんですよ。

__あの赤からは確かに生命のエネルギーとでもいうようなものを感じますね。

伊藤:ポピーレッドはもちろんですが、コレクション全体が実にパワフルです。

__というのは?

RAIN KASURI

伊藤:今回のJJVEは「アメリカ」がキーワードだと感じています。

このシーズンイチオシ生地の藍染デニムの「青」、和の雰囲気が漂うレインカスリの「白」に生命力にあふれたポピーレッドの「赤」。まさに、星条旗カラーなんです。

他にも今期はデニムや、USヴィンテージTシャツのにあるそうな杢感が美しい、ヘビーに使えるカットソーの生地、首元に巻いたバンダナや、着丈の短いシャツと、ところどころでアメリカンなクリエイションが見られます。

__なんでアメリカをイメージさせるモチーフを用いているんですかね?

伊藤:コロナ禍になってからというもの、ウイルスは変異を繰り返し、感染の波も何度もやってきて、なかなか先行きが見えない時間が続いているじゃないですか。

だけど、僕たちは新しい世界に向けて進み続けないといけないんです。

だからこそJJVEたちも、アメリカの開拓者たちのパワフルで希望に満ち溢れたエネルギーをイメージしたんじゃないか、と思っていて。

__どこか、原始的というか根源的なエネルギーも感じますよね。

伊藤:それは自然や生命のエネルギーを感じさせるからじゃないでしょうか。赤は生命の躍動を感じる血の色ですし、レインカスリは雨や大地のリズムです。

ちなみに今期のチュニックも、アフリカの民族衣装「ブブ」をイメージしたもので、ボリュームのある生地使いで生命力に満ちた表現をしています。

__なるほど。やはりコロナ禍がデザイナーたちに影響を与えているんですね。

伊藤:JJVEだけではなく、コロナ禍は多くのデザイナーに変化を与えています。

JJVEたちがこのシーズンのデザインをしていた去年の秋冬は、世界的に深刻なコロナ禍に見舞われていました。

彼らが住むベルギーも2020年秋頃に急激に感染が拡大し、1日に数万人規模で感染者が出ているような状況だったんです。世界的に見てもコロナ禍で多く人が亡くなられました。

ただ、後ろばかりを見ているのではなく、乗り越えて僕たちは前に進まなきゃ。そういうメッセージをこのシーズンの作品からは感じます。

今期のキーカラーであるポピーレッドもまさにそんな想いを込めて用いられた色なんだと思ってて。

__どういうことでしょう。

伊藤:赤いポピーは海外だと戦没者の追悼式で手向けられたりする花なんです。

花の色によって意味が違ってくるのですが、赤いポピーの花言葉は「慰め・感謝」なんです。

__……!だから「それでも僕たちは前に進まなきゃいけない」なんだ。

これは【考察】JAN JAN VAN ESSCHE は 2022SS COLLECTION “CYCLE” で何を伝えようとしたのか?でも書いたんですが、今季のCOLLECTION MOVIEはさまざまな人種・性別・年齢の人たちが、悲しみや死の象徴としての夜を乗り越え、希望や生命の象徴である朝を迎えるというストーリーでした。

そこから僕はシーズンテーマの“CYCLE”に生まれ変わりとか、再出発、みたいな意味を感じ取っていたんです。

だから今の伊藤さんの話を聞いて、よりいっそう合点がいきました。コロナ禍の次の、新しい世界への希望を示してくれているというか。

「今シーズンはJAN JAN VAN ESSCHE以外のブランドも爆発していました」―――CONTEXT TOKYOの2022SSバイイングテーマとは?

AIZOME DENIM

伊藤:そういう彼らの想いに感動して、今季は僕も新しいスタイリングに挑戦したいと思ったんです。

ポピーレッドの赤もそうだし、藍染デニムの青もそうですが、こういう色って今までCONTEXT TOKYOではあんまり扱ってきませんでした。もっと東洋的な陰を感じる色使いのものが多かったんですよ。

でも今期はそこから抜け出して、僕はもちろん、お客さまにも、新しい自分を楽しみたい、楽しんでほしいって思ったんです。

JJVEも、今までの色使いから解き放たれたかのような、軽やかな色使いが魅力的です。彼らも、変化を求めているし、楽しんでいるんだと思います。

__攻めのバイイングなんですね。

伊藤:まさに。THE CONTEXT TOKYOではなくて……野球で言えば某読売巨人軍みたいなノリというか(笑)。

__みんな4番ってことかな?(笑)

伊藤:どうしても春夏って、花粉、梅雨、台風に猛暑って、しんどいことも多いですよね。今はコロナのこともありますし。でもそういうことに負けずに、エネルギーを爆発させるようなシーズンにして欲しいなって思うんです。

今季はJAN JAN VAN ESSCHEだけじゃなく、他のブランドも大きく変化しています。それぞれが爆発的なエネルギーを持っている。

その中でうまくバランスのとれたバイイングをするのは難しかったですが、各ブランドのほとばしるエネルギーを生かしたバイイングにしているので、皆さんにはぜひ期待しておいてほしいですね。

シーズンカラー“ポピーレッド”が似合う人って?——PARKA #9 POPPY CORSE HEMP / COTTON

__とはいえ、ポピーレッドの赤って、着こなしが難しいんじゃないでしょうか?

伊藤:例えばPARKA #9 POPPY CORSE HEMP / COTTONなんかは、パンツに黒、インナーに明るめのグレーやイエローなんかを持ってくると、意外と違和感なく着こなせますよ。

ボタンとか紐とか、パーツが黒なのでPARKA #9以外を黒に統一してもいけます。

個人的にはあれだけ透明感のある軽やかな色合いの生地だから、インナーも軽くて明るい色にしてテンションを上げて着たいですね。

初見だとインパクトある色だと思いますが、意外と馴染んでくれる不思議な色なんですよね。それに「新しい世界を見たいならこれでしょ!」っていう色だと思いますよ。

__確かに先ほどのシーズンテーマの話も踏まえると、この色は何か新しいことに挑戦したり、今までとは違う道に進んだり、っていう春を迎える人にはぴったりの色ですよね。心を癒して、そのうえで背中を押してくれるというか。

伊藤:うんうん。ポケットや肩のステッチの位置、脇下のサイドシームなんかも、従来のJAN JAN VAN ESSCHEよりも良い意味で主張しないデザインになっているので、ぜひともこれを機にポピーレッドという色に挑戦してほしいですね。

僕としても、このフードコートは届いて、見て、着た瞬間に「ああ、これは買うだろうな。やられちまったな」と思っちゃったんですよね。

もうすぐZIGGY CHENやEdwina Hörl、XENIA TELUNTS、Taiga Takahashiの第二便と、楽しみなブランドがどんどん届くのでなんとか我慢してるんですけど……(笑)。

気になる素材——“LEAD LINEN / BAMBOO CLOTH”

LEAD LINEN / BAMBOO CLOTH

__他におすすめのアイテムとか、素材ってありますか?

伊藤:素材で言うと、“LEAD LINEN / BAMBOO CLOTH”と“AIZOME COTTON DENIM”ですね。これもいいんですよ……。

“LEAD LINEN / BAMBOO CLOTH”は一見するとチャコールグレーなんですが、光の加減で明るいグレーにも黒にも見えるという、どちらかというと今までのJAN JAN VAN ESSCHEの良さが詰まったかのような生地です。

竹(BAMBOO)で作られたアセテートの繊維を使っているんですが、竹って抗菌作用があるんですよ。

よくおむすびとか竹の葉で包んだりしてるじゃないですか。ウイルスから守ってくれる、コロナ禍を生き抜く為の保護服的なイメージ。

それに、竹はこのシーズンのテーマを象徴としている植物なんです。

__どういうことですか。

伊藤:竹は生命力が強くて、山を燃やしたとしても復活するんです。

地下茎で繋がっていて、再生力に優れた植物なんですよ。まさに、「CYCLE」。今期にぴったりの素材じゃないですか。

また竹は夏場に汗をかいてもパリッとしたハリのある素材感が持続しますし、JAN JAN VAN ESSCHEらしいボリューミーなシルエットも維持できるんですよ。

PARKA #9でも取り扱いがありますが、これならジェダイマスターコーディネートがおすすめですね。

__ジェダイマスターコーディネート!?

伊藤:そうそう(笑)。今シーズンのTUNIC #️30をインナーにして、上からKIMONO JACKETをあわせて、最後にPARKA #9を着る。JAN JAN VAN ESSCHEらしい着こなしになると思います。

ちなみにTUNIC #️30は“LEAD LINEN / BAMBOO CLOTH”での取り扱いもありますよ。

__TUNIC #️30はけっこう今季の穴場というか、手を出しやすいプライスで、かつちゃんとJAN JAN VAN ESSCHEのエッセンスを取り入れられて、と僕の中で勝手におすすめアイテムになっています(笑)。

伊藤:今季のチュニックはショート丈のものをセレクトしたので、春のインナー使いに最適です。首元のVゾーンをきれいに見せて着こなして欲しいですね。

あと、アイテムで言うと半袖シャツのSHIRT #88に関しては、名作の予感がしています。

__じわーっとくる系ですよね。

伊藤:そうなんです。短く設計された丈にハイウエストパンツ。まさにアメリカのカジュアルのバランス感で、元LEEのデザイナーならではのセンスというか、Jan Janが自身の経験を活かして作った一着なんじゃないかと思ってます。

__ちなみにこのシャツでも“LEAD LINEN / BAMBOO CLOTH”の取り扱いがありますね。

気になるアイテム―――JACKET#47、TROUSERS#67&#68

伊藤:アイテムで言うと、あっという間に売り切れてしまったんですが、JACKET#47ですね。このジャケットは本当にモンスタークラスの一着でした。

素材が藍染のデニムなので、色んなブルーが入ってるんです。生成り、淡いブルー、濃いブルーっていうように。だから生地の表情がまず最高なんです。

加えてJAN JAN VAN ESSCHEのパターンでデニムジャケットを作ったことで、普通のいわゆる「Gジャン」とは段違いの美しさです。

・生地の耳が背中のシームに入っている。
・カフスの部分を生地を折り返すことで作っている。
・折り返すことで生地の色が変わるので、ボタンを外して着るとアクセントになる。

アウターにもなるし、コートのインナーにもなる。タフな生地だからガシガシ着られるのに、ちゃんとJAN JAN VAN ESSCHEらしい美しさや着心地もある。

__それはもうバケモノ……。

伊藤:でしょ?(笑)このデニムジャケットとセットアップで旅立っていったTROUSERS#67のデニムも良かったんですよね。一見Carharttのペインターパンツ的なノリかと思いきや、ちゃんとJAN JAN VAN ESSCHEなんです。

__今季のJAN JAN VAN ESSCHEのパンツのうち、TROUSERS#67と#68は折り紙のように平面図を折りたたんだようなパターンを採用していましたね。僕、このパターンのJAN JAN VAN ESSCHEのパンツ、大好きなんですよ。

伊藤:わかります。ウエストやヒップがキュッときれいにまとまるんですよね。一方でサイドシームがなくなるので、JAN JAN VAN ESSCHEらしいワイドシルエットもきれいにズドンと落ちてくれる。

__そうなんです!僕は20SSの折り紙パターンのワイドパンツを持っているんですが、色が黒だということもあって、本当に年がら年中履いています。

ショート丈のトップスに合わせてもかっこいいし、裾までしっかり太いからロング丈のシャツなんかと合わせても負けないんです。生地次第では冬のアウターにも負けない存在感もあるし。

ほんまに、このパターンがいっちゃん(一番)好き(笑)。

残念ながらAIZOME DENIMのTROUSERS#67は旅立ってしまったようですが、他の素材でも取り扱いがあるので、ぜひお客様には試していただきたいですね。

ONLINE STOREでJAN JAN VAN ESSCHEのアイテムを見る

<NEWS>
・ZIGGY CHEN 2022SS COLLECTIONの第一便が東京・CONTEXT、京都・乙景に到着。
・東西各店、ONLINE STOREにJAN JAN VAN ESSCHE 2022SS COLLECTIONが到着。

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書き手/鈴木 直人(ライター)
話し手/伊藤 憲彦(CONTEXT TOKYO 店主)