新年のご挨拶——V.O.F代表・菊地央樹より
新春を迎え、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。旧年中は、格別のお引き立てを賜り、心より感謝を申し上げます。
今回は年始にあたりV.O.F代表・菊地央樹より、社会として、会社として大きな変化のあった2020年を振り返るとともに、2021年にお客様に提供したい価値について語ってもらいました。
2020年は「自分たちだからこそできることは何か?」を改めて考えた年
__菊地さんにとって、2020年はどんな年でしたか?
「自分たちだからこそできることは何か?」を改めて考えた年でした。
__どうしてそんなことを考えたのですか?
やはりコロナ禍の影響が大きいですね。身も心も内に引きこもる時間が長くなる中で、自分や会社の身の振り方を深く考える時間も長くなりました。
「洋服」とは文字通り西洋発祥の文化ですが、アジアにも衣服の文化はずっと存在してきました。今衣服を扱っている私たちがその文脈から完全に切り離されているはずはありません。
であれば「日本で生まれ育った私たちだからこそ、衣服やその周辺の文化に対してできることがある」と思うんです。
__確かに、昨年は会社として様々な「見直し」が行われた年でしたね。
はい。PHILOSOPHYにも書いている「ファッションは人と時代を映す鏡」という標語を改めて掲げ直したのも、Dollarで商品構成の大幅な見直しを行ったのも昨年です。
まだ手続きは終わっていませんが、社名を株式会社AURICから株式会社Vision Of Fashionに変更することに決めたのも2020年の話ですね。今はホームページや販促物に日本的な意匠を取り入れるために試行錯誤をしています。
__乙景店主・中村発のブランドZIIINがローンチしたのも2020年でしたね。
そうですね。京都という街から、私たちが考える時代に合ったファッションを発信する。これもまた「日本で生まれ育った私たちだからこそできること」のひとつと言えるかもしれません。
2021年、V.O.Fがお客様に提供したい価値とは?
__2021年はV.O.Fとしてどんな年になりそうですか?
会社として7期目にして、再出発の年になると考えています。質と量で言えば、これまでは量を追いかけてきたところがありますが、これからは質を高め、会社としての芯の部分をより強く、濃くしていくイメージです。
__お客様にはどのような価値を提供していきたいですか?
今年に限ったことではないですが、自分の価値観や人生観に基づいて衣服を選ぶことの楽しさを提案していきたいですね。ファッションと一口に言っても、切り口は様々。見方を変えれば、感じる価値も変わります。
__どういうことでしょうか?
例えばCONTEXT TOKYO店主伊藤憲彦の「今着たいアウター」でもご紹介したようにJAN JAN VAN ESSCHEのヤクウールのアイヌカラーコート。これはシンプルに「肌触りの良い、合わせやすいコート」という見方もできます。でも一方で、神聖な動物であるヤクの産毛で作ったもので、お守りのような側面を持っている衣服、と見ることもできます。
あるいは弊社が行っているリユース事業は「お得に高品質なアイテムを手に入れられるサービス」と考えることもできます。しかし見方を変えれば衣服のサスティナビリティーを高めるひとつの選択肢と見ることもできます。
このように、どの角度から光を当てるかによって、衣服の価値は大きく変わると思うんです。多様な衣服の選び方を提案することで、ファッションをすること、衣服を着ることが、お客様にとってもっとずっと楽しいものにできればと考えています。
__そのために、会社としてどのような取り組みが必要だと考えていますか?
第一にブログでの発信の質と量を強化すること。そしてより多くの人に読んでいただけるよう、ホームページのリニューアルも含めた施策を行うこと。これらについては、現在鋭意進行中です。
第二にお客様にとっての店舗、オンラインショップの利便性の改善です。SNSを通じた店舗からの情報発信を増やす。オンラインショップの商品説明や着用画像の掲載をする。できることはたくさんあると考えています。
「一番伝えたい、知っていただきたいことは、“お店の価値”です」
__最後に、V.O.Fのお客様に伝えておきたいことはありますか?
一番伝えたい、知っていただきたいことは、V.O.F各店が持つ“お店の価値”です。手前味噌で恐縮ですが、私はV.O.Fの代表として、各店が持つ魅力には強い自信を持っています。
__どういったところに魅力があるのでしょうか?
まずは人です。大阪のDollar、京都の乙景、東京のcontext、各店には衣服に対する知識やセンスだけでなく、人生観や美意識、所作においても魅力的なスタッフがいます。
通販サイトが発達し、いつでもどこでも衣服を買える時代においても、お店にいる人が持つ魅力は、代替できない価値のひとつではないでしょうか。
次に衣服そのものが持つ魅力です。今のご時世、先ほど言ったようなウェブでの情報発信やオンラインショップの利便性向上は必要不可欠です。
しかしV.O.Fの店舗で、スタッフとセッションをしながら、衣服を見て、触れて、着るという体験をしてこそ、ようやく伝わるものがあるということも事実です。弊社は出店するエリアや、建物、そして店舗の内装などもじっくりと吟味していますし。
__確かにDollar、乙景、context、いずれも行くまでの道を含めてデザインされているように感じます。
出店する際は、自然や街を庭園の背景として活かす「借景」という日本庭園の技法を強く意識しています。土地の持つ空気や歴史、文化と、私たちが扱う衣服が合っているか。これが衣服の魅力をより高めるために必要だと考えているからです。
各店、状況に応じた感染症対策をしておりますので、お客様にはぜひともお店に来ていただきたいですね。
語り手:菊地央樹(V.O.F代表)
聞き手:鈴木直人(ライター)