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2022S/Sシーズン、買ってよかったものは?【CONTEXTスタッフ・伊藤香里菜編】

V.O.Fメンバーの「2022S/Sシーズン、買ってよかったものは?」シリーズ、今回はCONTEXT TOKYOスタッフ、伊藤香里菜です。

彼女が紹介してくれるのは、店主・伊藤憲彦と共に行った愛知・有松での絞り染め体験。

モノについてのお話ではありませんが、秋冬から取り扱いが始まるブランドsuzusan、そして自分自身とより深く向き合うきっかけになった体験について、語ってもらいました。

「愛知・有松での絞り染め体験は、suzusanと自分により深く向き合う時間になりました」

__伊藤(香)さんにとって、2022S/Sはどんなシーズンでしたか?

伊藤(香):CONTEXT TOKYOのスタッフとしては、色を紹介するのを楽しめたシーズンでした。

2022S/Sのバイイングは多くのブランドが、アフターコロナに向けての後押しをするような色や形を提案してくれましたが、お店としても新しい生活に向けての挑戦という意味合いで、鮮やかな色合いのアイテムをたくさんセレクトしていました。

だから自分の中で、色について改めて考えたシーズンになったんです。ちょうど先日リリースしたJOURNALも色についての文章でしたし。

__個人的にはどんなシーズンでしたか?

伊藤(香):個人的には、ファッションに限らず周りを見た半年間だったなと思います。大学では学生最後の1年間に向けて、自分が学びたいことは何かをもう一度振り返り、どう過ごすか考えましたね。

またお買い物をするにしても、他のお店やV.O.Fで取り扱っている以外のブランドもよく見るようになりました。CONTEXT TOKYOはもちろん私の基盤ですが、それ以外の場所にも足を運んで視野を広げる余裕が出てきたというか。

__なるほど。そんな中で伊藤(香)さんが一番買ってよかったと思ったのは何ですか?

有松天満社

伊藤(香):買ってよかった、というかお金を使ってよかったなと思うのは、愛知・有松での絞り染め体験です。

__それはいつ行ったんですか?

伊藤(香):CONTEXT TOKYOが移転前にお店を閉めていた、6月上旬です。

__どうして有松まで行こうと思ったんでしょうか?

伊藤(香):2022年A/Wから取り扱いが始まるブランドsuzusanの工房があるからです。

取り扱うにあたって、店主の伊藤とも「自分の手で絞り染めを体験してみたいよね」ってずっと話していて。お店を閉めていたその時期がベストタイミングだろうということになったんです。

有松では、絞り染め体験には街全体で力を入れていて、私たちが伺う少し前の6月4〜5日は年に一度の「有松絞りまつり」というお祭りで、絞り製品の展示販売や体験などもやっていたようです。

__絞り染め体験って、具体的にどういうことをするんですか?

伊藤(香):絞り染めにはたくさん種類があるんですが、今回はその中でも手蜘蛛絞りという技法を教えていただきました。

これが、私が実際に絞り染め体験で作ったものです。

白地の布をいただいて、模様を入れたいところを霧吹きの水で濡らし、専用の絞り台にかけて折り畳んでいきます。そのあと、糸を使って絞っていくんです。染色液につけたら、糸を外して乾かして完成です。

模様が蜘蛛の巣状になっていますが、蜘蛛の糸の部分が絞りに使った糸の部分です。

__一連の作業でどれくらい時間がかかるんですか?

伊藤(香):20〜30分くらいですね。絞る場所を増やせばいくらでも作業できてしまうので、時間を決めて体験させていただきました。

__作業としては簡単?それとも難しい?

伊藤(香):suzusanの皆さんからは「作業自体は簡単ですよ」と伺っていたんですが、私は「簡単だけど、単純じゃない」って思いました。

どんな配置で絞るのか、絞る範囲はどれくらいにするのか、糸はどれくらいの力で絞るのか、どんなリズムで絞るのか……そういった細かい要素が全て仕上がりに影響してくるからです。

確かに一回やれば「ああ、こういう理屈でできてるのか」という理解はできます。でも考えることはたくさんあって、単純じゃないなと。

__すごくリアルな感想ですね。実際に体験しないと気づけないところだと思います。

伊藤(香):suzusanの絞り染めのスカートを1着持っているんですが、製品だけではそこまで見えていませんでした。実際に体験してみて、suzusanというブランドとより深く向き合えたと思います。作品に対する解像度がすごく高くなったんです。

私たち伝え手はこういうものづくりの背景までちゃんと伝えていきたいって思いましたし、このJOURNALを読んでくださった方も機会があればぜひ体験に行ってみて欲しいと思いますね。数千円でできるはずなので。

__そういう経験ができたから、絞り染め体験が2022S/S一番の買い物だった、ということですか?

伊藤(香):実はもう一つ理由があります。それは自分自身ともより深く向き合えるようになったからです。

__どういうことですか?

伊藤(香):絞り染めって文字通り手仕事なので、作り手の人となりや癖みたいなものが色濃く出ると思うんです。例えば、私の作った絞り染めは職人さんが作ったものに比べて絞りの幅が大きくなっているんです。

どうしてそうなったかと言うと、私が配置にばかり気を取られて、絞る糸の幅まで意識できていなかったから。これだけでも、一つのことに集中しすぎて他のことがおろそかになりがちな、私らしさが表れているなって思って。

良い悪いではなく、「これが自分なんだなあ」と。

__確かに自分の中から出てきたものが形になると、「ああこれが自分か」って思いますよね。

伊藤(香):今年の目標は「自分らしい接客を見つける」なんです。伊藤さんから学ぶことはまだたくさんありますが、かと言って真似ばかりでもダメな気もしていて。

そろそろ自分らしいやり方を見つけたいなって思い始めていた時期だったので、絞り染めから自分らしさを感じられたのも大きな収穫だったんです。

__うんうん、確かに価値のある買い物ですね。最後に次に欲しいもの、今狙っているものを教えてください。

伊藤(香):うーん、まだ何も決めてないですね。今CONTEXT TOKYOは移転直後でアツいお店だと思うんですが、同時に最近までエアコンがなくてとっても暑いお店でもあったんです(笑)。

ようやく業務用のエアコンがついたり、サキュレーターを置いたりして快適になりましたが、今までの暑さのせいで秋冬にまで頭が回らなくて(笑)。これからゆっくり考えたいと思います。

__よっぽど暑かったんですね……。今日はありがとうございました!

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語り手/伊藤 香里菜(CONTEXT TOKYO STAFF)
書き手/鈴木 直人(ライター)