VISION OF FASHION

MENU

COLUMN

<ZIIIN 21SS>ローンチ直前インタビュー テーマとおすすめのアイテムについて

ようやく春の訪れを感じる暖かい日が続くようになりました。ウールのコートがコットンやリネンのコートに、ダークトーン中心のカラーがベージュやグリーンなどの優しいトーンにと、装いから春を感じたくなる時候です。

そんな中、V.O.F発のブランド「ZIIIN」の21SSの1stデリバリーが4月初旬に決定。京都・乙景には全てのアイテムが揃い、東京・contextにも店主伊藤のセレクトしたアイテムが並びます。

そこで今回は、<ZIIIN 20SS&AW>のテーマとその背景 1年を経てデザイナーの中で起きた変化とは?に続き、21SSコレクションのテーマや、色、シルエット、素材について、デザイナー中村憲一に語ってもらいました。

最後には乙景の営業や盛岡でのイベントについての情報もありますので、ぜひお見逃しなく!

21SSのテーマとは?「闇の中で過ごした“孤独”から“羽化”へ」

__21SSのテーマは昆虫類が成長し、さなぎや幼虫から翅が生えていく成長過程の「羽化」だと聞いています。これについて詳しく教えてください。

世界が暗闇に包まれた20SS「新月」、そこからさらに深く孤独の闇のなかに進み、自分と向き合った20AW「孤独」。

21SSは闇から出てきて、弱々しくも美しい羽を出すイメージだった。だから「羽化」なんです。

昨年からコロナウィルスにより、世界に暗雲が立ち込めましたよね。人との交流が制限され、常に不安な空気が漂っていました。

その頃、私は京都に来たばかりで、アトリエに独り籠って制作をしていました。誰も何も知らない街で誰とも接する事なく、黙々と独りデザインスケッチしたりしていて。

それと同時に、自分の過去を振り返ってばかりいました。夜には寂寥(せきりょう)感に包まれ、心によぎるのは、自分の未熟が招いた愚かな過去ばかりでした。

心が幽霊のようにウロウロして、なんだか暗澹(あんたん)たる気持ちでしたね(笑)。

__なかなかに辛い状況ですね。

しかし、日を追うごとに気持ちの変化があった。「今は考える時なのだ、ここから新しい自分に変わるのだ」と言う前向きで強い気持ちになりました。

__何か前向きになるきっかけはあったのでしょうか?

その頃、“TASH SULTANA” というアーティストの音楽をよく聴いていて。彼女の創作スタイルは、自分の部屋で全部の楽器演奏を自分独りでやるんです。宇多田ヒカルなんかもそうだと聞きました。

二人とも大好きなアーティストなんですけど、なにかそういうインディペンデントな創作活動に憧れていて。あれ?自分もできてるな、って気がついたんです。

チームでやるのもいいけど、一人は一人の良さがあるなと。自分の気持ちに嘘をつかなくなるというか。孤独だけど、見方を変えると今の状況はとても幸せだなと思ったんです。

__今季はその孤独の時間を充分に過ごしたあと、次のステージに進むイメージなのでしょうか?

充分ではない。でもずっと閉じこもっているのではなく、充分ではないなりに次のステージに行く準備をしなければならない。それが今季春夏の「羽化」です。

21SSの色について「黒への眼差しに変化があった」

__そうしたイメージは、どういったところに現れていますか?

色ですね。20SSは魔法を感じさせるカラフルな色味を選びましたが、21SSではベージュやモスグリーンといった、自然の色を中心に選んでいます。

__ベージュやモスグリーンは、羽化直後のセミの色合いを思い出します。

あとは黒を入れましたね。パンツでは3型、トップスでは1型を新しく黒で作ります。


__これまでZIIINは黒をなるべく避けてきた印象がありますが……。

そうですね。去年は極力黒から距離を置こうとしていました。ただ、距離を置いたからこそ、冷静に使えるようになったと思っています。黒への眼差しが変わってきたというか。

__どのように変化したのでしょうか?

去年は「不吉で暗い」というイメージが強かった。しかし近頃は自然の中にある黒に気付くようになったんです。

例えば、夜の帳の黒、星々の合間にたゆたう黒、あとは黒檀という樹木の黒などです。これらの黒からは力強さい美しさを感じます。

そして、やはり黒はモードの基本色です。自然を謳っているのに、意地を張って使わないのは自然じゃない。素直になろうと思いました(笑)。

だから、今季はモードが好きな人たちにもZIIINの世界に入ってきてもらえたら、という思いです。

「新作パンツのMASAMUNEは誰もが履きやすいテーパードシルエットに」

_色以外のところで、何か服作りに変化はありましたか?

シルエットを全体的に少し細くしています。あとは新作パンツの “MASAMUNE”(税込21,780円)もおすすめですね。足に向かって細くなっていくテーパードパンツです。ZIIINの中でも一番すっきりしたシルエットなので、誰にでも履きやすいかと思います。

また、昨年の秋冬 “MIROK” は今季春夏でも引き続きバギーパンツとして作るのですが、スッキリと履きやすいように改良しています(税込27,280円)。

“DARMA” “TENGU” もテーパードに改良しました。

__今までZIIINはワイドシルエットのパンツが多かったですよね。どうしてこういったパンツを作ろうと思ったのですか?

私自身がワイドパンツばかり履いてきたので、そろそろテーパードパンツを履きたいなと思っていたのが一つ。

あとは友人やお客様から「細身のパンツも作って欲しい」とリクエストもありましたので、より多くの人にZIIINを届けるためにも必要なシルエットだと考えました。

”MASAMUNE” がファッションの入り口になってくれたら嬉しいですね。

素材にも要注目「UKA・DARMAで使ったシースルー素材では男性のセクシーを表現」

__素材に関しては、昨年の春夏同様、リネンが中心となっていますね。

ポコポコとした表情が好きなんです。樹木の肌などの有機的な、自然のテクスチャに近いからだと思います。

MASAMUNEやMIROK、あとは新作ショートブルゾンのGOKUH(税込43,780円)などで使っている「ベルガモリネンキャンバス」はおすすめの素材ですよ。

__どういった素材なのでしょうか?

リネンではあるのですが、ハリがあって少しコットンに近い質感があるんです。樹木のような表情と乾いた質感です。軽くて涼しいですし着心地も良いですよ。

__いくつかのアイテムで使われているコットンのオーガンジー(ごく薄手の透けて見える織物)も新しい素材ですね。

21SS版のDARMA(税込27,280円)では裾から内腿にかけての部分をこの素材にして、シースルーにしました。新作カットソーのUKA(税込18,480円)も背中の大部分にこの素材を使いました。

とても通気性のよい素材なので、単純にものすごく涼しく着られて、同時に透け感も楽しめる、面白い素材ですよ。

日本の夏は年々暑くなっていますから、今季は特に涼しく、軽く、快適に、を念頭に置いて作りました。

__サンプルを見せてもらいましたが、新品の時は「けっこう透けてるな……」という印象でしたが、洗いをかけるとシワと毛羽立ちのおかげで、ちょうどよい透け感になっていました。

そうなんです。私は以前から男性には男性のセクシーがあると考えていて、UKAではそれを表現したかった。男性も肉体を見せてもいいんじゃないかと。

アラビアの女性が身につけるヴェールや、日本のすだれや蚊帳のような、見えそうで見えない、見えないようで見える奥ゆかしさ。

UKAの黒では、あのような「透けて見える向こう側に、何かの気配がある」という神秘的な雰囲気を楽しんで欲しくて。

ジャン=ポール・ゴルチエのようなゲイカルチャーのファッションを思い出す人もいるかもしれませんが、「ジェンダーレス」や「セクシャリティ」が日常の言葉になっている今であれば、もっと多くの人に響く表現なのではないかと考えています。

__挑戦的なアイテムではありますが、同時に面白い提案だと思います。

シンプルな中に色気が漂うのが好きなんです。それが私なりの「大人のファッション」だと思っています。今季で言えばUKAはその代表格ですね。

4月初旬の1stデリバリーに乞うご期待 アウター・シャツ・パンツなどを発表予定

__ああ、もうすでに楽しみでたまりません!もう冬には飽きてきました……1stデリバリーはいつになるんですか!?(インタビューは2月8日に収録)

落ち着いてくださいね(笑)。1stデリバリーは4月初旬を予定しています。

京都・乙景にはアウター・シャツ・パンツなど全ての春物アイテムが、東京・contextには店主の伊藤君がセレクトしてくれたアイテムが並びます。

乙景も4月2日(土)と3日(日)は13〜19時の通常営業、それ以降は金・土・日曜日を通常営業日とし、より多くのお客様にZIIINと、インポートブランドの衣服を見ていただけるようにします。

以前にも増して、ゆったりと京町屋での時間を過ごしていただけるよう、工夫を凝らしている最中です。

また、盛岡での乙景販売会も決定しました。日時は2021年5月1日(土)2日(日)3日(月)11時〜17時、場所は岩手県盛岡市にある南昌荘、松鶴の間です。ZIIINはもちろん、インポートブランドも見て頂けるようにする予定です。

なかなか大きな声で会いに来てくださいとは言いにくい時節ではありますが、ご期待いただければと思います。

ZIIIN 21SSコレクション LOOK PHOTOはこちら
<ZIIIN 21SSコレクションの販売ページはこちら>※現在準備中

【乙景 春夏営業開始】
・4月3日(土)と4日(日)は13〜19時の通常営業
・以降は金・土・日曜日、13〜19時の通常営業

【乙景販売会@盛岡】
・日時
2021年5月1日(土)2日(日)3日(月)11時〜17時
・場所
岩手県盛岡市 南昌荘 松鶴の間
https://www.iwate.coop/kankyou/nanshousou/
※できる限りの感染対策を講じたうえでの開催をさせていただきます。

聞き手/鈴木 直人(ライター)
語り手/中村 憲一(京都・乙景)